いまや必須アイテム。海の道を導いてくれるGPS 【海の道具】
街道を行く、といえば大歴史小説家・司馬遼太郎の全43巻からなる未完の紀行文集を思い出します。でも、これからおはなしするのは海の道の話。
海には航路はあっても、それは目に見えず、車のようなガードレールもなければ車線も引いてありません。轍さえもありません。航跡があってもそれはあくまでも前を行く船が行こうとする場所に導いてくれるだけ。陸地が見えるところならばまだ目標のたてようもあるけれど、陸地を離れれば、後は見渡すかぎり波頭が見えるばかりです。
昔の船乗りたちは大したものだと思いを馳せながら見つめるのは、GPSプロッターの画面。
自分がどこにいるのか、どの方向に進んでいるのか、画面を見ればたちどころに判ってしまう便利な機器で、車のカーナビに比べてもその依存度は数倍に高いと言ってよいでしょう。
さらに使いこなせば、海に道を引くことだってできるんです。
方法は簡単。カーナビと同じように、目的地を地図画面から設定するだけ。ただし、その前にしておかなければならないことがあります。それは道路で言えば道幅となる、コースの幅を設定すること。つまり、地図画面上に引いた線からどれだけ外れたらアラームを鳴らすかを予め決めておくのです。
例えば、その幅を5メートルと設定すれば、中心線から船が左右どちらか5メートル以上外れるとアラームで知らせてくれる。目に見えない10メートル幅の海道を、アラームを鳴らさず真っ直ぐ進めば、目的地にドンピシャリと到着できるわけです。
とはいえ、そこは機械だから、機嫌を損ねることだってあるかもしれません。そんなときのためにも海の男、海の女を自認するなら、GPSを使いこなすだけでなく、フネにはチャート(海図)を積み、三点方位法などクロス法による位置出しぐらいはマスターしておきたいものです。それと潮の流れや他船の動きなどには要注意。もちろんワッチ(見張り)はどんなときも怠りなく!
※この記事は過去の「Salty Life」の記事に加筆・修正して掲載しています。