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完全復活を果たした小渕浜のワカメとヤマハの舟 【ニッポンの魚獲り】

 ニッポンの魚獲り、今回も魚ではありません。海藻のお話しです。ワカメです。

 いま、日本でも有数のワカメの産地として知られる宮城県石巻市・小渕浜ではワカメの収穫シーズンの真っ盛り、のはずです。潮回りが良いのか「日本一うまい」と漁師(=養殖業家)さんたちは、自分たちが手がけて育てたワカメを自画自賛します。自画自賛して許されるほど、実際に美味いです。
 11年前の出来事を思うと、このワカメの美味さが消滅せずに本当に良かったと思うのは、被害に遭った漁師さんたちだけでなく、私たち消費者も同じかもしれません。

いちはやく復活したワカメ養殖

 津波被害では、ほぼ全ての養殖資材を失った小渕浜の漁師さんたちでしたが、猛スピードでワカメ養殖の復活を果たしました。ホヤやカキなど、同じく石巻で盛んに行われていた養殖海産物に比べると成長が早いこともワカメ養殖業の復活のスピードに拍車をかけました。また小渕浜のほとんどの漁師さんたちは、津波の警報が出るとすぐに沖に船を逃がしました。津波が収まった後、港が破壊され、しばらく上陸できなかったという苦労はありましたが、それでも船は残りました。先人の教えを守ったおかげでした。

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 小渕浜でカキ・ワカメの養殖を営むヤマキチ水産の石森利一さんは、もともとはワカメではなく、カキ一本で養殖を営んでいました。津波が発生した日、船は沖に避難させたものの、養殖施設は全滅でした。一時は事業をやめることも頭をよぎりましたが「息子に“今までやってきたことをなぜやめるんだ。やめて一体何をするんだ”と励まされて奮い立った」といいます。いまでは、震災の直前に検討していたワカメ養殖にも着手。秋から仕込みを行い、翌春には出荷ができるワカメ養殖は、水揚げ高の伸張に大きく寄与し、新たな積載・作業船としてヤマハの新鋭和船「W-43AF」を導入できるまでに至りました。
 和船とは船外機を使用したむかしながらの船のスタイルを生かした小型船のヤマハでの呼称です。「W43AF」は、ヤマハの和船シリーズの最大スケールモデルで、主に沖縄の観光業とこのワカメ養殖の市場に向けて開発されました。作業時の安定性はいうに及ばず、その積載能力は石森さんのワカメ養殖の効率化に大きく貢献しています。

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 同じくワカメ養殖を営む木村水産の木村貞義さんは、愛艇〈五十鈴丸〉は船外機をヤマハのラインアップ中、最大馬力である「F425A」に載せ替えました。北米のプレジャーボートに人気の、この大型船外機を業務用に導入したのは国内では初めてのケースでした。
 木村さんは「F425A」を搭載した和船でワカメ養殖の他、アナゴ漁も行い、成果を収めています。

知ってください、ワカメのこと。

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 ところで、ワカメ本来の姿を知っているようで、知らない人は多いのではないでしょうか。わたしたちがよく知る、味噌汁や酢の物などに使うワカメは、多くが縮れて袋に入って売られています。その多くは「葉ワカメ」です。「メカブ」はというと、ほとんどはすでに刻まれてパックに入っています。その葉ワカメとメカブがそれぞれ異なる品種の海藻だと思い込んでいる人も割と多いかもしれません。

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 海中でゆらゆらしているときのワカメは、ひと株がシダの葉のような形をしています。中央に茎があり、その両脇から葉が生えています。メカブはというと、最下方にある根っこの真上の部分です。スーパーなどで売られているメカブの多くはすでに湯通しされて刻まれ、きれいな緑色をしていることが多いのですが、本来は緑がかった 茶色っぽい、大きなヒダを特徴とする異様な物体です。最近では生メカブとしてスーパーなどにも並んでいてるので、自分で湯通しから楽しむことができます。湯に通すと瞬く間に、あの茶色が、美しい緑色に変色するというわけです。楽しいし、美味しく食べられます。

 小渕浜のワカメ養殖は、4月が終わるころ、ゴールデンウィーク前にはすべての収穫を終えます。

ヤマハボート


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