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新たな生産体制で最高級の有明ノリが生まれた。 【ニッポンの魚獲り】

 佐賀、福岡、熊本、長崎と有明海を囲むそれぞれの4県それぞれの地域では、ノリ養殖が盛んに行われています。全国に知られるブランド品「有明ノリ」の産地です。かつては養殖から加工まで漁家1軒ごとが独自にノリ生産を行ってきましたが、現在では多くの地域で協業化が進み、分業化によって質の高いノリ作りが行われています。

 佐賀市の川副町に暮らし、ノリ養殖を営んでいる江頭一吉さんのノリの摘み取り作業に同行させてもらったことがあります。
 出漁は夕方、日の入り後すぐ。最大の干満差が6メートルと言われる有明海でのノリ養殖業は、満潮を基準に作業時間を決めるため、日々異なります。収穫に当たる摘み取りは、鮮度や品質を追求するため、主に夜間での作業になるのです。

箱船で摘み取った海苔をポンプで運搬船に移す。この日の収穫は約1万枚分

 「なるべく直射日光に当てずに水揚げするというノリの品質へのこだわりがあって、夜間に摘み取りをしています。作業自体は2~3時間ぐらいですが、潮汐に合わせた時間に併せるので、体力的にけっこうきついんですよ。慣れている場所とは言っても夜は自然と気を張っていることが多くて、疲労がたまりやすいんです」

 沖での養殖、陸での加工とそれぞれの作業を分業にしたことで、漁期中でもかつてのように「寝る暇も無いと」いうことはなく、その分、こだわって、ノリ作りに集中して目を配れるようになったと言いますが、それでも気が休まることはないそうです。

「ノリ養殖は天候に左右されるので、手を掛けても掛けるすぎることはありません。種付けを行う秋から春の最後の摘み取りまで、がんばって良質なノリを作るのがこの仕事のやりがいです。漁期中は沖にある網のことばかり考えてしまいますよ」

 港から漁場までは15分ほど。両側にはびっしりと支柱が張り巡らされた水路を走って自分のノリ網を目指します。江頭さんは網に着いてからは無駄な動きもなく、父の照夫さんと箱船とよばれる小舟に乗り換えて、網にびっしり付いたノリの刈り取りを始めます。 
 刈り取りの箱船が満載になると母船に戻り、摘み取ったノリを積み替えて、再び箱船に乗って刈り取りを行います。沖での作業は2~3時間、この日の水揚げは枚数に換算するとおおよそ1万枚分にもなります。

進化する漁労機器も良質なノリの生産に欠かせなかった

「毎年変わる自然環境の中で、それに合わせていいノリ作りの試行錯誤を重ねる。そうしたちょっとずつの積み重ねが安定供給につながっていると思います」

 約30年前に始まった個別の漁家によるノリ生産の協業化は、漁労機器や船の改良も併せてノリの質を高め、生産量の底上げに繋がるなど、有明のノリ養殖に大きな変化をもたらしました。
 「作業は毎日大変ですけど、佐賀のノリは日本でもトップクラスの質と水揚げ量ですからね。やりがいはありますよ」と笑顔で話す江頭さんのように、有明の海では多くの方が誇りを持ってノリ作りに励んでいます。

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