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表層の回遊魚を果敢に追う、ジャンボ曳き縄漁 【ニッポンの魚獲り】

 沖縄本島の南東部に位置する中城湾の、さらにその東方沖合にはパヤオと呼ばれる浮魚礁が設置されています。このパヤオ周辺で盛んに行われているのがジャンボ曳き縄漁。主に40〜50キロクラスのマグロ類(主にキハダ)を漁獲します。知念漁業協同組合の内間紹文あきふみさんの操業に同行しました。

 沖縄周辺で漁獲の長期安定化を目的にパヤオが設置されだしたのは昭和50年(1975年)頃から。パヤオを設置することでこの浮魚礁を中心とした新たな生態系が生まれます。ジャンボ曳き縄漁は、ほぼ同じ頃、パヤオに集まる表層の大型魚の漁獲方法として有効なことから九州方面から導入され、行われるようになった、いわゆる「トローリング」の一種です。

沖縄本島西部の沖合に設置されたパヤオ。水深は1000メートルほどもある

 船体に約8mの高さの長い1本の立て竿を設置。その先端からナイロンテグスを船の後方に伸ばし、いわゆるヒコーキや梵天などの抵抗体を繋げます。ちなみにこの抵抗体が「ジャンボ」と呼ばれることから、この漁法名がついています。
 このジャンボとナイロンテグスの間に、等間隔で3本の枝糸を取り付けます。枝糸の先にはイカを模した疑似餌を取り付けます。この疑似餌がちょうど波頭を叩くように長さを調整して海面を曳いていくのです。

こちらは九州・宮崎で使われているジャンボ曳き縄用の抵抗体の一部。
内間さんはヒコーキの形をした抵抗体を使用していた

 出港して90分ほど。沖縄本島の東方に設置された1基のパヤオに到着すると内間さんは早速、ジャンボの仕掛けを投入し、漁を開始しました。あっという間に、小型のキハダマグロが次々とかかります。
 主なターゲットは40〜50キロのマグロですが、この日は小型のキハダ、シイラといった回遊魚が中心。

この日のメインの漁獲は小型のキハダ(キメジ)
時化の中、イカの疑似餌にアタックしてきた中型のシイラを釣り上げた

 実は、この取材は時化のために出漁取りやめが続き、レポーターは沖縄に何日間も滞在を続け、やっと実現したものでした。それでもかなり高い波が残っていました。結局「これ以上は無理をさせられない」とレポーターを気遣う内間さんは、約2時間ほどの操業で港へと戻ってくれました。実際にレポーターは、もうヘロヘロでした。

 優しい内間さんは中城湾の湾口を形作るように浮かぶ、久高島の出身です。底曵船やマグロ遠洋漁船に乗り組んだあと、親兄弟と共に定置網を経営するなど高校卒業後からは漁業一筋で取り組んできました。取材当時は本島に移住しており、モズク漁とマグロやカジキの一本釣りをメインに、こうした曳き縄漁や、ソデイカ漁、潜水漁など休むことなく漁業を営む生粋の海人です。

知念で海人として暮らす内間さん

 一本釣りの季節には2日、3日漁を続け、大型のキハダやクロカワカジキを満船にするまで港に戻ることはありません。

 愛艇はぞっこんに惚れ込んだ「第十五 勝福丸」。古い船ですが絶大の信頼を置いています。
「とにかく時化に強い。他のフネが走れないような日でもこのフネはしっかりと走ってくれる。沖に出ていて漁が良くて早々と満船になったときは“もう少し大きいフネもいいかな”と正直思うこともあるけど、やはりこのフネが気に入っている。いろいろな漁に使える、自分にとっては完璧な船」(内間さん)
 内間さんによると、モズク養殖もこなせ、さらに一人で漁をするには約12メートルというこの船のサイズはぴったりなのだとか。

 内間さんの話すとおり、時化模様の海の中を抜群の安定感を発揮して漁港に到着。風の強くなった港では、笑顔の素敵な奥様が内間さんの帰りを待っていました。

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