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夜の東京港は面白い。 【Column- 潮気、のようなもの】

 9月の初めに、夜の東京港を船でクルージングするイベントがありました。ボートやヨットの業界で仕事をしているライターやカメラマン、編集者などからなる団体の主催で、かれこれ20年ほど前から、長く続けているイベントです。
 パーティ用のクルージングボートを借り切って、知り合いや仲間を誘い合って飲食しながら夜景を楽しみます。走るコースは毎年趣向を変えているものの、これだけ毎年参加していると飽きそうなものですが、そうでもない。長く続けてこられたのも、けっこう楽しかったりするからです。やはり夜の海は特別なのです。

ゲートブリッジをくぐり抜けて羽田を目指しました

 自身の経験を振り返ると、ヨット(セーリングクルーザー)に乗っていた若い頃は、それなりに夜の海を体験していました。夜間に走るヨットレースもあったし、クルージングでは午後の遅い時間に出港し、次の目的地へと船を夜通し走らせたりしていました。もちろん普段の練習でも夜間帆走を取り入れていました。

 夜間のセーリングが好きだったかと言われると、「はい!」と即答できないのが実のところなのでありますが、それでも夜の、格別に美しい海でのセーリングを体験したことはときどき自慢します。
 マスト灯があってその灯りが反射する白いセールが邪魔をするので、山のそれとは比べものにならないかもしれませんが、周囲360度が海という状況で見る星空や流れ星を見るのは最高であったし、引き波にきらめく夜光虫の幻想的な美しさは筆舌に尽くしがたい(といっても本来は赤潮の要因となるプランクトンなのですが)。もちろん安全に気を遣う場面が多いことは言うまでも無く、強風の時などは恐怖を感じたりすることもありました。それでも夜の海は特別なのでした。

隅田川にかかる勝鬨橋。時々この川を遡ることもあります(2022年撮影)

 東京港のナイトクルージングは、外洋で目にするような星の美しさとは無縁だと思います。ただ共通することもあります。それは「光」の存在です。光がなくては世の中は真っ暗闇、何も見えないわけですから当たり前と言えばその通りなのですが、海ではとにかく光が感動を演出します。さらに夜の東京港の場合、あまり目にしたくはない、余計なものは消えて見えなくなります。その代わり、普段の日中のボーティングでは見慣れた、ありきたりの風景、例えば橋やコンテナが積み上げられた埠頭などが美しく幻想的に、目を楽しませてくれるのです。

お台場には多くの屋形船が集まっていました。
夜景が美しい上に波もないので宴会にはぴったりのポイントです
夜通し動いている大井埠頭です。コンテナを一つ一つ積み上げていました。
巨大なUFOキャッチャーのようです

 先述したように、クルージングのコースは時によって趣向を変えています。運良く日程が重なれば花火見物もします。またライトアップされたいくつもの橋をくぐって隅田川を遡ることもあります。
 この日は、勝どき(中央区)にある朝潮桟橋を出港、運河から隅田川をくだり、ゲートブリッジをくぐり東京港へと抜けてから、城南島の沖にある羽田空港のB滑走路を目指しました。人気のコースです。

 夜の7時前。地方空港からの羽田便が着陸するラッシュともいえる時間で、着陸しようとする飛行機が次々と頭上を飛んでいきます。この場所は昼間にプレジャーボートで来ることが多く、飛行機も見慣れてはいるのですが、やはり夜は素晴らしい。
 初めて夜の滑走路に降り立とうとする飛行機を真下から、間近に目にしたときは「未知との遭遇」の1シーンを思い出してしまいました(古い映画の話ですみません)。自分が地球にいることを忘れてしまいそうです。

飛行機の翼の右側には緑、左側には紅のライトが点いています。
そうです。船と同じです

 このパーティのメンバーは海に慣れた者がほとんどです。それでも夜、空飛ぶ飛行機を海から見る機会はなかなか無く、毎回、感動して大満足なのです。

夜の東京港連れて行ってくれた「マルコポーロ」。
ヤマハ発動機が1994年に建造したパーティ用のクルーズ船です

 なお、このパーティに使用しているクルーズ船は、実をいうとヤマハ発動機が平成6年(1994年)に特別受注で建造したカスタム艇。建造時からオーナーは変わっていますが、縁あって毎年使わせてもらっています。
 東京に数ある屋形船の中でもかなりお洒落で雰囲気のある船だと思います。なにかのパーティーを開くときなど、使って見るのも一興だと思いますがいかがでしょうか。


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