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七つの海を支配する「ラム酒」の話。 【キャビンの棚】

 知り合いのヨットのキャビンの入り口に、こんな文言を書いたプレートが貼り付けてありました。

 DO NOT DRINK from 7:59AM untill 8:00AM.

 意味はわかりますか。一見すると、「アリに群がる象」の錯覚と同じく、「このヨットのオーナーはお酒が嫌いな下戸なのかな」と思ってしまいますが、二度見すると、禁酒の時間はわずか1分間。つまり、「いつでもお酒を飲んでいいよ」という意味なのです。

 マリーナの船の上、それとも海辺のカフェのオープンテラスで。海辺でたしなむお酒はおいしいですよね。とりわけ、これから迎える夏には。今年も暑くなりそうです。
 みなさんはナニ派ですか。とりあえずビールから始まって…まあ、左党にはなんでもおいしい。
 でも、海、船とくれば、ラムもいいじゃないですか。

 本書序章には、こうあります。

ラム。その響きを聞くだけで照りつける太陽、椰子の木、白い砂浜で彩られた想像の世界へ誘われる。さらに海賊が登場することがあるかもしれない。

 う~ん、ティキバーの世界ですねえ。本書は、そんなラム酒に関する〈絵で読むラム教本〉なんです。製法から産地、銘柄、よく合う料理、カクテル、はてはアルコールの人体への影響や二日酔いの予防と対処法までありとあわゆるラム情報が載っています。

 御存じの通り、ラムはさとうきびが原料の蒸留酒(スピリッツ)です。発祥の地は、本書では〈バルバドス?〉としていますが、プエルトリコ説もあるようです。いずれにしてもカリブ海の島なんでしょうが、さとうきびは東南アジアの原産。カリブにはありませんでした。大航海時代以降、カリブの気候が生育に最適だとしてプランテーション作物として持ち込まれ、その労働力としてアフリカから奴隷を移入しました。ラムを語る際には、決して忘れてはならない歴史です。

 序章にもある通り、カリブの海賊どもがあおる酒の代名詞となりました。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』が公開された後、イギリスではラムが大ブームになったんです。そして、七つの海を支配するイギリス海軍でも、ラムは水兵への官給でした。ラムを飲めば、ビタミンC不足が引き起こす壊血病にならないと信じられていたからです。実際は本末転倒で、レモンやライムが奨励されていたのですが、うわばみ連中が、それをラムにぶちこんじゃったからそうなりました。だから、ラムはわれら船乗りの酒なんです。

 どうです、のどが渇いてきませんか。わたしもそろそろ原稿なんて書いている場合ではなくなってきました。ルパート・ホルムズのあの歌をかけて、ピニャコラーダにするか。それともマイタイ、モヒート…。どれも自分でつくるにはめんどうですね。ここは自由に、コーラを注いでキューバリブレで、どうよ!

 みなさんも節度を守って、楽しくやってください!

「ラム酒は楽しい!」
著者:ミカエル・ギド
発行:パイ・インターナショナル
価格:2,750円(税込)


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