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いつになったら出番はやってくるのだろうか。 【海の道具】

 ビッグゲーム(カジキなどの大魚)フィッシングを楽しむボートに乗り込むと、片隅に少年野球用のバットが。 なぜ? とよく見ると、野球で使うバットとはちょっと様子が違います。形状は確かにバットなのですが、やけに短い。そしてグリップエンドに少し長めの紐のループが取り付けられています。
 実はこれ、カジキの頭を叩くための、専用の棍棒なのです。通常は「バット」、または「フィッシュバット」などと呼びますが、正式名称は「ビリークラブ」です。

 針にかけたカジキを長時間のファイトの末、ようやく船べりまで引き寄せ、ギャフ(魚鈎うおかぎ=大きな釣り針のような形をした銛の一種)を打ち、逃げられないようにしたところで、バットでカジキの脳天を殴打し、とどめを刺すのです。そうして静かになったところで、ようやくビル(くちばし)をつかみ、デッキに引き揚げる、というのがカジキを取り込むときの流れです。
 いくらファイトで疲れ果てたカジキとはいえ、最後の力を振り絞って暴れだしたら、とてもじゃないが触れることはできません。しかもカジキのビルは非常に硬く鋭く尖っており、簡単に人間のお腹も引き裂くほど危険なのです。ちょっと物騒な道具ですが、獰猛なカジキを安全に取り込むには、ビリークラブで命を絶つしか方法がないのです。

 ビリークラブには握りの部分に滑り止めのグリップテープが巻かれており、振り回したときに手から離れても飛んでいってしまわぬように手首に巻く紐もついています。長さも重さも成人男子が片手で扱うのにちょうどいい仕様です。用途は一点だけですが、そのための装備は十分行き届いてしつらえられています。
 でも、と思います。
 このビリークラブが本当に役に立つときがくるのだろうか。カジキがヒットしたことさえない者としては、“宝の持ち腐れ”を危惧して止みません。

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