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青森のホタテが美味しいワケ 【ニッポンの魚獲り】

 日本におけるホタテの水揚げ高は北海道が一位ですが、養殖の生産量となると話は別。青森県のホタテが全国の半数以上を占めているのです。その青森県で稚貝の資源量が激減しているとのニュースが飛び込んできました。成貝の生産量にも影響が出そうですが、より徹底した養殖管理が求められることになりそうです。

 青森県・陸奥湾の南東部に位置する野辺地のへじでホタテ養殖を営む柴崎悟さんは、祖父の代から続く“老舗”のホタテ養殖業漁家の主です。現在は主に稚貝から3年間育てて出荷する3年貝の生産に取り組んでいます。

養殖ホタテの水揚げ作業

 陸奥湾は津軽半島と下北半島に囲まれ、八甲田山や対馬海流に乗って白神山地のブナ林の栄養水が注がれることから、上質な植物プランクトンが豊富です。そんな環境で、陸奥湾では天然のホタテが十数年ごとに大発生を繰り返していましたが、安定した水揚げ高を確保するため昭和30年代から今日に至るまで、ホタテの養殖の研究が進められてきました。それでも、その間に陸奥湾では数度の養殖ホタテの大量斃死という憂き目をみています。
 最も記憶に新しいのは、平成22年の夏、養殖業漁家や加工業者の生産効率を高めるために「ホタテガイ適正養殖可能数量制度」を導入した直後に発生した湾内の異常な高水温化による大量斃死です。

野辺地町でホタテ養殖を営む柴崎悟さん

「苦労はしましたが、不幸中の幸いで稚貝の斃死は運良く免れ、その後、立て直すことができました」と柴崎さんは当時を振り返ります。

 現在、陸奥湾にはエリアごとにブイロボットが設置され、海況自動観測システムが構築されています。これにより、水温ばかりでなく潮速や海中の溶存酸素量などのデータを養殖業漁家に提供しています。
 「いまは精度の高いデータをスマホで受け取れるようになっています。それによって、籠や耳吊りの高さを変えるなど対応しながら安定した生産量を確保してきました」(柴崎さん)
 陸奥湾の養殖ホタテは、良好な環境のみならず、研究者たちの英知が尽くされ、養殖に従事する人々の絶え間ない努力の上に成り立っていることが伺えます。

 取材の日は柴崎さんの奥様の由子さんとご長男の力哉さんとともに出港し、成貝の出荷に備えて、水揚げ作業を行いました。

船上はオートメーションの工場のようにスムーズに作業が進む

 〈第八宝丸〉の水揚げ作業は、抜群のチームワークで流れるように行われていきます。デッキの最後尾には洗浄・選別機が装備され、作業を終え港に到着する頃には出荷の準備が整う状態になっています。

 わずか1cmほどの稚貝を籠に移し、さらに耳吊りにしてから3年。陸奥湾の自然の恵みのなか、柴崎さんたちが手塩をかけて育てたホタテはこの時点で12cmほどまでに育っています。

ご家族でホタテを育てる柴崎さん

 「ホタテに対してどう思うか、ですか? 何よりも愛していますよ(笑)」
  柴崎さんが育てるホタテの独特の甘味、満ちあふれる旨味の秘密はそこにあるようです。

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