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しっかりとした資源管理で美味しいシジミを安定して届ける。 【 ニッポンの魚獲り】

 今年は土用の丑の日が2回ありました。ウナギの他にシジミを召し上がった方も多くいらっしゃるのではないかと思います。シジミは健康によいといわれ、特に肝臓の機能を促進する効果は江戸時代中期に書かれた食品本にも記されています。このシジミを、日本人は縄文時代から食べていたことが貝塚などから推察できます。

 青森県津軽半島北西部の日本海岸に面した十三じゅうさんは、白神山地から注ぐ岩木川の淡水と日本海からの海水が混ざり合った汽水湖で、国内有数のシジミ産地として有名です。

 十三湖では、資源保護のため、船を使ってシジミを採取する「船ひき漁」には漁期が設けられていて、4月10日~7月10日までの3カ月間と、8月20日~10月15日までの2カ月間が公域の漁期となっています。さらにシジミ漁に使う漁具「鋤簾じょれん」の目合いは12mm以上に規定(12mmより小さいシジミは採取できない)され、1日の収穫量も140kgまでに制限されています。このように、十三湖にある二つの漁協(十三漁協と車力しゃりき漁協)が厳しく管理しているおかげで、安定した漁獲高が得られるのです。

 車力漁協の理事でもある工藤徹さんは、シジミ漁をはじめて30年というベテランです。足のケガで入院しているときに知り合ったという看護師の奥様と結婚してからは、奥様と二人で漁に出る毎日。車力のなかでも有数の水揚げを叩き出している腕っこきの漁師さんです。

工藤徹さんはご夫婦で船に乗りシジミ漁を行っている

 「浅いところに入っていけるかどうかが、一番のテクニックです。狙った漁場へは全速力で向かって、操業するときはプロペラを小さなものに交換した上で、船首のタンクにポンプで水を入れる。そうすることで船尾を浮かせて浅瀬に入っていくことができる。まあ、口で言うのは簡単だけど、勘所を間違えるとプロペラを曲げてしまう。みんなが同じようにできるわけじゃないんですよ」(工藤さん)。

十三湖のシジミ漁。工藤さんが手にしているのが鋤簾じょれん。これで湖底を掻き、シジミを獲る

 水揚げしたシジミは大中小のサイズに仕分けてから出荷されますが、小さいサイズのものは漁師さんが個人で管理する「畜養場」に戻して、大きく育ててから出荷することもあるそうです。
 「シジミの浜値が一番上がるのが土用の丑の日の直前なんですよ。この時期、鰻丼にシジミの味噌汁は付き物でしょ。だから畜養場ではそのタイミングを狙ってシジミを大きく育てておく。シジミ漁は毎日やってるんだけれども、市場の状況を見極めながら出荷量を調整していくことで収入はけっこう変わるものなんですよ」

浜に戻るとシジミの仕分け作業

 十三湖という奇跡の汽水湖が授けてくれる「シジミ」という宝物を持続的に利用していくという構えが、すっかり板に付いているのでした。


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