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底建網で獲る、船上で締める、紋別の活け締めホッケ 【ニッポンの魚獲り】

 厳寒の季節に突入したオホーツク海沿岸の町々。この紋別でも、一日の最高気温が氷点下という日々が続いています。そして年が明け、2月になると流氷の季節。紋別のホッケの底建網そこたてあみを取材したのは、流氷の季節が過ぎ去り、間もなく夏を迎えようという、5月の末のことでした。暦の上では初夏へと移りつつあるときでしたが、それでも朝晩はかなり冷え込みました。

 夜の23時30分、紋別漁港の〈第七十五 克恵丸かつえまる(ヤマハDX-97C-0A)は静かにもやいを解き、漆黒に包まれた沖の漁場を目指しました。船に乗っているのは船主の能登谷のとや勲さん、そして勲さんの叔父にあたる船頭の能登谷雅範さん、雅範さんの息子である昇さんら4名でした。

網起こし。写真手前は船主の能登谷勲さん。高校卒業後、1年間の学業生活を経た後、漁業に従事してきた

 真っ暗闇の漁場に着くと、早速、前もって仕掛けてあった、底建網の網起こしです。底建網は、海底へ向かって箱状の網をおろし、海底に広げた網口からその網へと魚を呼び込む漁法です。ドラムを使ってロープを巻きあげ、船に固定した後、溜まりといわれる網を引き上げ、獲物を船上へと取り込みます。このホッケの他、季節によってカレイやイカなども漁獲します。

チームワークは抜群で作業は流れるように行われていく

 沖に仕掛けられた網は計7ヵ統。操業中、船頭の雅範さんが大声で指示するようなことはまったくなく、手際よくほぼ無言で作業を進めていきます。4人の息はぴったりと合い、それはまさに「プロの仕事」といえる見事なもの。能登谷さんたちの手練によるところが大きいのはもちろんですが、スムーズに操業できるその背景には、広々としたデッキを持つ〈第七十五 克恵丸〉(DX-97C-0A)の性能も寄与しているかもしれません。

 定置網の作業船としてヤマハの和船と船外機を使用しているものの、能登谷さんたちにとって〈第七十五 克恵丸〉は初めてのヤマハ漁船でした。
 「中古でも人気があったことは知っていたので(ヤマハは)かなりいいんだろうなとは思っていました。実際に使ってみて、大いに満足しています。安定性が良くてローリング(横揺れ)しない。特に沖で時化しけられたときなどでも安心感がありました。積載量も大きく、運搬船として使用することがあるのですが、そのときも活躍します」(能登谷勲さん)

紋別港の〈第七十五 克恵丸〉

 若い頃からなんとなく「自分は漁師になるんだろうな」と考えていたという船主の勲さんですが、特に父親が船を降りてからは、紋別の沿岸漁業の次代を担う漁業従事者として意識も高まっていきます。
 「少しでも魚の価値を高めていきたい」と、活け締めホッケの取扱を始めたのも、そんな意識から生まれてのことでした。

ホッケは次の網に移動する間にサイズ別に選別、活け締めしていく

 操業中は息つく間もありません。網から魚を船上に上げると、ホッケは循環イケスに生かし、次の網に移動する間に魚を大きさ、種類ごとに選別。大物のホッケやニシンは船上で一尾ずつ、丁寧に活締めにしていくのです。そして次の網に到着すると同じ作業を繰り返していきます。そして漁港に戻り、さらに細かく選別して出荷するのです。

我々がふだん口にする北海道の名産・ホッケは干物にされることがほとんど

 ヤマハ漁船と能登谷さんたちから送り出されるそれらのホッケは、締め方などの工夫を重ね、日ごとに品質が向上。札幌などの消費地で評価が上がっていると、能登谷さんが嬉しそうに教えてくれました。


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