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海にある、輝かしくも繊細な悲しみ。 【キャビンの棚】

 海は楽しい。海は美しい。海に行くと気持ちが良くって、ひとを幸せな気分にしてくれる。異論はないのですが、例えば、愛する人との別れや、人生の嵐に打ちのめされた悲しみを時に思い起こさせるのも、また海だったりします。

 フレデリック・ディーリアスの「海流」は、アメリカの国民的な大詩人、ホイットマンの「草の葉」に寄せて、バリトン独唱、合唱、管弦楽のために作曲されました。

 少年が見つけた、つがいの鴎。その鴎が親業に励む姿に、海は祝福するかのように輝きます。でも、ある日、雌の鴎は巣に戻らず、雄の鴎だけが残されました。雄は雌の死に戸惑い、夏の潮騒のなか、満月の元、波の間を、戻らぬ伴侶を求めながら飛び続けます。人間の喪失と悲嘆の経験とが重なり合います。

 こうした海の輝かしさと繊細な悲しみが、バリトンの独唱と合唱に沿って流れて行きます。

 「告別の歌」もまたしかり。海の懐の深さ、美しさを改めて思わされます。

「海流」「告別の歌」「日没の歌」

■奏者:サリー・バージェス(メゾソプラノ)、ブリン・ターフェル(バリトン)、リチャード・ヒコックス(指揮)、ボーンマス交響楽団
■レーベル:Chandos Classics
■価格:2,310円(輸入盤参考価格)

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