フネや乗り手にも優しい? 「テンダーボート」 【海の道具】
よく省略されて「テンダー」と言い表すことが多いのですがが、正式には「テンダーボート」といいいます。
ボートに搭載しておいて、海岸に上陸するときや、陸から離れたところに停泊しているボートに乗り移るときなどに利用するための小型のボートで、ランチなどと呼ぶこともあるそうです。
本船(大型船)などでは救難艇も兼ねていたり、エンジンを搭載したものもありますが、小型ボート用のテンダーはそこまで大掛かりなものではありません。何より収まりが良いことが重要な条件になります。そのため、分割式や組み立て式、ゴムボートを代用することもあります。
一番使用する場面が多いのは、桟橋のない砂浜や小島なんかに上陸するときでしょう。
船底にキールのついたクルーザーヨットはもちろん、ボートでも潮の満ち引きは気になるし、船底が海底についてしまうと大ごとだから、あまり浅いところには停泊できません。かといって、水深のある沖に止めて海岸まで泳いでいくのもなんだし、荷物などあれば無理な相談。そこで活躍するのがテンダーボートというわけです。
十五少年漂流記や椎名誠の焚火生活に憧れた世代にとって、無人島やボートでしか辿り着けない砂浜は夢の世界を現実に体験できるユートピアかもしれません。そんな夢を叶えるためにボートを購入しようと考えたオーナーさんもいるんじゃないかと思います。そんな夢を実行するにはテンダーボートが必需品となります。
また、テンダーボートは緊急時の補修メンテナンスにも威力を発揮してくれるときがあります。例えば船外機にロープなどを巻き付けてしまった時なども、テンダーボートに乗り込めば、チルトアップ(船外機を傾けてプロペラ部分を水上に上げる)した船外機から容易にロープを外すことが可能です。
つまり小さくて小回りの利くテンダーボートは、母船にとって、優しいテンダーなボート、と言える。それが語源ってわけじゃありませんが。