「自動膨張式ライフジャケット」を洗濯機で洗わないでください 【海の道具】
飛行機などで使われるコンパクトな救命胴衣は、紐を引っ張ってボンベに穴を開けて膨らませます。ただ、これは引っ張るという「行為」を伴うために、水に慣れていない人だと、ちょっと困ることになるかもしれません。そこで登場したのが、水に入った事を察知して、勝手にボンベに穴を開けて膨らませるといったスグレモノ。水の感知の仕方は色々あるのだけれど、代表的なものは、ぎゅっと巻いた紙を使ったもの。
えっ、紙? そう、紙です。
ボンベを突き通す針の下に強いバネを仕込んでおきます。そうしておいて、ボンベと針との間に硬く巻いた紙の入った筒を入れて、バネを押しつぶして固定しておきます。 すると、落水してしまった時に、硬く巻いた紙を水が溶かすことでバネが伸び、針を押し上げてボンベに穴を空けるという仕組みです。
文章にすると、少しばかりめんどくさそうですが、紙といっても非常に溶けやすく加工された特殊なものなので、針がボンベに穴を空ける時間は、落水してから数秒の瞬く間です。
どぶんと水に落ちて潜りだす頃にはもう、救命胴衣が膨れ上がって、体を浮かびあがらせてくれます。
とまぁ、こんな便利な機能が付いている水感知式ではありますが、これとて、一回使って穴をあけたボンベを着けたままにしたり、水を感知するパーツがきちんと装填されてなければ膨脹機構は機能しません。
そこで今度は、それらを一目でチェックできる機能を有したものが開発されました。もうこれで大丈夫。着用する前に点検用の小窓を見てチェックすればいいのだから。
う〜ん、でも膨脹させる部分に穴が開いていたら、やっぱり空気漏れが生じてしまうじゃないかって? それはその通り。時々口で膨らましてみないことには完璧ではないということです。
つまり、どの救命用具も使いっぱなしにせず、定期的にお手入れやチェックを行うことが必要なのです。救命胴衣も釣り道具などと同じように、大切に手入れしてやってください。
でも、ボンベをつけたままライフジャケットを洗濯機で洗ったりしないように。洗濯機の中でライフジャケットが膨脹し、ドッカンドッカンとものすごい音が鳴り響いたという、まことしやかな失敗談を語る人が実在します。
※この記事は過去の「Salty Life」の記事に加筆・修正して掲載しています。