船長はサバイバルに強い!【海の博物誌】
アメリカの軍隊の『サバイバル・マニュアル』は、遭難したときの心得として「必ず生還するのだという強い意志を持て」と繰り返し説いているそうです。
海に限らず、山や戦場でも、遭難者が死亡するのは、飢えや寒さのためよりも、遭難してしまったという恐怖とショックによることが多いといわれています。
海での遭難では、生存者の中に、船頭や船長がいることが多いようです。文化12(1815)年に南米で保護され、カムチャッカ経由で帰国した尾張の国・督乗丸の船頭・小栗重吉、天明2(1782)年にアリューシャン列島に漂着し、10年後にロシアの使者と共に帰国した伊勢の船頭・大黒屋幸太夫などは有名な例です。
また、現代の遭難報道でも、船長や艦長が最後までしっかりしていたという例はたくさんあります。
船頭になるような人にはもちろん経験もあり、体力もある人が多いということもあるでしょうが、なによりも「生還しよう、生きて帰らなくては」という意思が、他の人よりもずっと強いものなのかもしれません。その責任感が困難と戦う勇気を生み、生存につながるといわれているのです。
なお、小栗重吉、そして大黒屋幸太夫も、日本に生還した後に幕府からそれ相応の地位を与えられていることも興味深いですね。