何でも受け入れてくれる寛大な竿立て。 【海の道具】
釣竿という物、当たり前のようにボートに持ち込まれる製品ではありますが、実は相性はそれほどよろしくありません。 釣り竿は長くて安定感に欠け、しかも繊細です。脆そうなガイドも付属しているし、リールを付ければ安定感はさらに悪くなり、仕掛けやルアーも装備されているとくれば始末に悪いことこの上ないのです。そんなものが船内やデッキにゴロゴロあった日には足の踏み場もなくなってしまいます。そのくせ一人1本は当たり前、3本、4本と持ち込まれることもめずらしくありません。
そんな始末の悪い釣竿をすっきりと収めてしまうロッドホルダーは、実はスグレモノのボート必須アイテムなのです。
一般的には機構は単純で、金属製、またはプラスチック製の筒型をしており、差込側には竿の傷つき防止のゴムやプラスチックがついていて、筒の内側下部にピンが入っています。このピンは竿尻を押さえるためにあるのですが、竿尻にスリットが入っていると、竿がくるくると回転するのを抑える機能も担っています。
取り付け方によって、埋め込み式と取り付け式とに分かれますが、両方を装備しているボートもよく見かけます。普通の釣りでは移動時に竿を収めるために使うわけですが、トローリングや深場釣りなどになると大きなロッドが必要になるため、釣っている最中もロッドホルダーに入れっ放しにする場合があります。
このロッドホルダーの使い道は、竿を収めるばかりではありません。例えばタモ網やボートフック、デッキブラシを、ホルダーに収めているボートもけっこう見かけます。タモ網やボートフックはともかく、デッキブラシは、見た目にはよろしくないと思いますが。
日本語で「竿立て」と書くとなにやら頼りなさげになってしまいそうですが、荒れる波浪時でもロッドをがっちり掴んで離さぬしっかり者、何でも受け入れてくれる寛大さ、何より入れたものを立てて自分は目立たない謙虚さ。おお、なにやら昔の肝っ玉母さんが浮かんできそうだ、と書けば「時代錯誤」と叱られるのでしょうか。