シェフの心遣いから生まれたシーフードドリア 【レシピ- 船厨】
料理を前にすると、そのルーツが気になっていても立ってもいられなくなることってありませんか? 冷凍食品のドリアを電子レンジで温めながら、「そもそもドリアというのはどこの国の料理なのだろうか」と気になりだします。グラタンの仲間のような気がします。フランス料理でしょうか。ところが私たちがレストランなどで口にするマカロニグラタンは、フランス料理のグラタンとは大きく異なる料理のようで、日本発祥の、いわゆる「洋食」だとのことです。となると、グラタンのパスタを米に置き換えたドリアは、やはり日本発祥の「洋食」ということになるのでしょう。
どうやら神奈川県の横浜の、あるホテルのシェフが考案したそうで、いまもそのメニューはそのホテルにあるカフェの看板メニューとして人気があるようです。
ホテルは横浜の港に面して建っています。道路と、緑色の美しい公園を挟んで海があります。目の前に、いまではミュージアムになっている帆船が浮かんでいました。少し離れて、大きな旅客船が停泊しているのが見えます。美しい港町です。
伝統を感じさせる佇まいのホテルに入り、ドリアのあるカフェのテーブルに着いてメニューを開くと、そこにシーフードドリアの説明があります。それによると、ドリアが初めてつくられたのは戦前のことです。体調を崩した一人の客の「何かのど越しの良いものを」という要望に応えて、初代の総料理長であったシェフが即興で創作した料理なのだそうです。シェフはフランスから招聘されたスイス人です。やはり日本生まれの洋食とはいえ、どうやらルーツはフランス料理なのですね。
ホテルのシーフードドリアはベシャメルソースの下にオレンジ色のクリームのようなものがあって、これはパプリカパウダーによる色なのだと、給仕の方が教えてくれました。
今回はそんな経験を経てから、シーフードドリアを作ってみました。シーフードたる所以のシュリンプとホタテ、そしてパプリカパウダーだけ、ホテルの真似をしてみましたが、あとはごく一般的なレシピだと思います。
もちろんホテルの味には及びません。それでも、ホテルの味に引けを取らない所もあるように感じます。それは食べる人への温かな心遣いと優しさです。これこそ「馳走」の原点なんです。