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アルバム 「Atlántica」 は「サイコー! 」な僕らによく似合う。 【キャビンの棚】

 「ある雨の日、どうしようもなく落ち込んでいて、なぜか涙が止まらなくなったの。そんなとき、車のラジオに手を伸ばしてスイッチを入れたら、とても楽しげな曲が流れてきて。悩んでいたことがばからしくなってしまったわ。聞いたことのない言葉と日本語が混じった女性の曲で『サイコーだよ』いうフレーズが心に残って
 と、心を寄せる女性から聞いて、“サイコーだよ”と検索をかけて探したら見つかりました。松田美緒のファーストアルバム「Atlántica(アトランティカ)」。「Saiko」はその4曲目に収められていました。曲名の通り、最高です。 

 この曲は大西洋に浮かぶ小さな島国、カーボ・ヴェルデで歌われているそうです。60年代に、日本の多くのマグロ漁船がカーボ・ヴェルデのサン・ヴィンセンテ島に寄港していました。何もない小さな港町だったらしいのですが、日本漁船がやってくると港はにぎやかに、華やかになります。地元のクレオールの人々も日本人の船乗りたちを歓迎し、船乗りも、心ゆくまでその港での滞在と歓待を楽しみました。日本人は、そんな彼らと仲良くなって“サイコーな奴らだ!” と、ことあるごとに口にしました。そのうちに、「サイコー」という言葉がその島に定着してしまいました。
 このアルバムの「サイコー」では、松田美緒が2番に日本語の歌詞を付けて歌っていますが、もともとは正真正銘、カーボ・ヴェルデの曲なのです。

 どちらかと言えば「サイテー!」と吐き捨てられることの多い拙子ですが、できるならば「サイコー!」と声をかけられたい。嬉しくなります。幸せな気持ちになります。
 船乗りにとってサン・ヴィンセンテ島がサイコーだったのは本当のことでしょうが、現地の人たちは、サイコーと言われて嬉しく思い、こうしたご機嫌な歌が生まれたはずです。私たちだってサイコーだと声をかけあえば、幸せな“何か”が生まれれていきそうな気がします。

 松田美緒は大学時代にアマリア・ロドリゲスのファドに魅せられ、独学でポルトガル語を学びました。2001年には本場のリスボンに住み、歌手として活動。ファーストアルバム「Atlántica」は、ファドを中心としながら、ブラジルのボサノヴァ、サンバ、ショーロ、カーボ・ヴェルデのモルナが入り交じり、まさに船に乗って「大西洋」を自由に行き交うがごときの作品となっています。歌だけでなく、アルバムコンセプトもサイコーです!

 ちなみに冒頭に登場した「心寄せる女性」とは、拙子の妻。なぜ落ち込んでいたのかは、いまだ不明でございます。サイテーです。

「Atlántica」
Mio Matsuda(松田美緒)
レーベル:ビクターエンタテインメント
参考価格:¥2,934(税込)

※この記事は過去の「Salty Life」の記事に加筆・修正して掲載しています。

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