島生まれ、船育ちのワインでつくる麗しのソース 【レシピ- 船厨】
もう20年以上も前になりましょうか。北大西洋に浮かぶポルトガル領のマデイラ島に訪れたことがあります。夏でした。とても暑かったことを覚えています。このとき、現地で何かと世話をしてくれた方が、土産にと持たせてくれたのがマデイラワインでした。
俗にいう、デザートワインなのですが、正直に言うと、筆者はデザートワイン自体があまり好みではなく、飲みきることができず、どうしようかと悩んだ末に、肉料理のソースに使ってみたのです。これがとても舌に麗しい。マデイラ島になんてそう行く機会がないから、その後も思い出してはときどき国内の酒屋さんから“お取り寄せ”している次第です。
このワインの製法は独特です。もともとはマデイラ島で生産されたワインを帆船でインドに運んだとき、現地で降ろし忘れてしまい、帰港後にそのワインを開けてみたら独特の風味がしてとても美味かった、という逸話があります。考察した結果、どうやら高温多湿の船倉に長く保存されていたこと、さらに航海中に波に揺られ続けたことが風味豊かになった原因だろうということになり、その条件を陸上で再現するなどして、現在の、時間を掛けて摂氏50度ほどで加熱処理をするというマデイラワインの製法に繋がっているとのことです。なお、今は揺らしてはいないそうです。
この降ろし忘れのエピソードは17世紀のことです。本当の話かどうかわからないのですが、いちおう、マデイラワインとはこうして生まれたことになっています。
さて、ネットで見つけたフランス料理のレシピで、いつもよりかなり真面目にマデイラワインでソースを作ってみたところ、改めて、「なんて美味いソースなのだ」と感動してしまいました。肉はミスジのステーキ用を使っています。
たまたま今回手に入れたマデイラワインのボトルには、帆船のイラストが描かれていました。マデイラワインは船で生まれたワインなのだよなあ、と改めて感じ入ってしまいました。島と船から生まれた恵みです。