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海を行き交う人々は誰であり、何を夢見ていたのか ─。 【キャビンの棚】

 海外の海をあちこち旅していると「ここはどこそこの海に似ているぞ」と思うことがよくあります。確かに海は、すべてが繋がっているのだし、それも沖に出てしまえば、その特色を見つけることはなかなか難しいことかもしれません。 
 でも、それぞれの海には人が生活しています。そして船があります。そこに決定的な海の特色を見いだすことができるのです。それらの存在こそが「海」を「文化」にせしめるのだと思えます。
 少し古い本ですが、「海が見えるアジア」を引っ張り出してみて、改めてそんなことを考えさせられます。
 セレベス海、ジャワ海、南シナ海、インド洋。著者の門田修氏が訪れたのは「国」ではなく「海」でした。そうすることで、既に定着してしまっているステレオタイプな「国」のイメージにとらわれることなく、「海の文化」を体験することができたのです。
 「人は海とどう接してきたのか」「海は人の暮らしをどう変えてきたのか」「海を行き交う人、また行き交った人たちは誰であり、何を夢見ていたのか」―。そんなテーマを抱えて、著者は海を旅しました。そしてそれらの答えはいつも人から得られたと、著者は言います。
 アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドといった、これらの素晴らしいボーティング文化を育んできた世界の洗練さとは対照的かもしれない「アジアの海」ですが、そこに生きる人びとが築いてきた歴史、その中で育まれてきた海洋文化は、同じアジア人として誇りでもあります。

「海が見えるアジア」
発行:めこん
著者:門田修
定価:3,500円(税別)

※この記事は過去の「Salty Life」の記事に加筆・修正して掲載しています。


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