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シジミ攻めにあっても嫌いになれなかった好物 【レシピ-船厨】

 かなり以前の話ですが、シジミを嫌いになりそうな出来事がありました。シジミの産地として有名な宍道湖に取材に訪れたときのことです。その取材先でお世話になった方が、拙子の妻が出産間近であることを知ると、「シジミは妊婦にいいのだ」といって、これでもかというほどシジミ料理を振る舞ってくれたのです。料理だけでなく、グラスに注がれたシジミのエキスも頂戴しました。一度にここまでシジミ攻めに遭うと、さすがに少しげんなりします。
 そもそも、なのですが、出産するのは妻であって、わたしではありません。
 鉄分が多く含まれるため「貧血気味の妊婦や授乳中の女性にいい」ということでしたが、本当なのでしょうか。

 肝臓に作用するため「シジミの味噌汁は二日酔いに効く」と言われていますけど、そのあたりの話は俗説だと思っていました。でも、オルニチンという成分が多く含まれていることは事実で、実際に、飲酒後の疲労を取り除く効果があると言われています。シジミを活用したサプリなども数多く、それなりに人気があることもうなずけます。
 健康のことはともかく、一度にシジミ漬けにされるのでなければ、シジミは好物と言えます。特にシジミの味噌汁。それを決定づけたのは、子供の頃、清洲(愛知県)出身の祖母の家で、おそらく関東地方の庶民の家庭にはそれほどなじみのなかった「赤だし」のシジミの味噌汁を食したことです。
 それはまるで、旅館で食事するような特別な味に感じたのでした。そして今は、青森や島根のシジミ漁師の顔、そして祖母の笑顔と、ときどき口から発せられた愛嬌のある尾張弁を思い出すのでした。

「シジミの赤だし」

■材料
シジミ(砂抜き)1パック、赤だし八丁味噌80g、水800cc、だし昆布5cmほど、長ねぎ6~7cm

■作り方
1)鍋にだし昆布とシジミを入れ火にかける
2)沸騰する直前にだし昆布を取り出し、灰汁あくをきれいに取る
3)赤だし味噌を入れる
4)お椀によそい、水にさらした白髪ねぎを入れる

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