絵本とピアノの自然讃歌 【キャビンの棚】
これまで本欄で何度か取り上げた、絵本作家のロバート・マックロスキー。その代表作のひとつに「すばらしいとき」という絵本があります。
アメリカのメイン州の小島ですごす家族の一夏の経験を描写した作品ですが、海や自然、そして家族を愛する者にとってはたまらない内容です。
マニアックといえば、確かにそうなんですが、海系物書きのグループの中に、同じくロバート・マックロスキーを愛するお方がおりまして、絵本の話で盛り上がったことがあります。そして、この絵本にぴったりの音楽があると勧めてくれたのが、ピアニスト、ポール・サリバンによる「Sketches of Maine」なのでした。
波の音、鳥の声で島々が浮かぶメインの海へと迎え入れられ、波うちぎわで足を濡らしながらはしゃぐ子どもたち、タイドプールでの水遊び、嵐の夜、満天の星空、夏が終わりメインを後にするシーンまで、間違いなく、「すばらしいとき」に合わせて創られた音楽です。
これを聞きながら、絵を眺め、渡辺茂男氏による研ぎ澄まされた訳を朗読する。秀逸なアートの三重奏です。
いつの日か、実際にメイン州のペノブスコット湾の島に身を置き、自分も加わって、この三重奏をカルテットにしたいと願わずにはいられません。
現在、国内ではMP3ダウンロード版が入手できます。