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二万マイルも潜れるのか? 【キャビンの棚】

 19世紀の終わりに活躍した“SFの父、ジュール・ヴェルヌの代表作に「海底二万里」があります。なぞの海底怪物として世間を騒がせていたネモ船長操る潜水艦「ノーチラス号」と、語り手であるアロナックス博士たちの冒険物語です。

 ヴェルヌと言えば、その科学技術の予言性が評価を高めており、「海底二万里」に登場するモーターを動力とする本物の潜水艦も、現実となって開発されるのは、この小説が発表されてから20年後のことなのだそうです。
 実際に潜水艦と言えばヴェルヌやネモを思い出す方は多いと思いす。“NEMO”と名付けられた個人向けの潜水艇も製品化されていたりします。

 ただ、ヴェルヌの小説の魅力はSF的要素だけではないのです。日本で、おそらくいまも読み継がれている(と信じたい)「80日間世界一周」「十五少年漂流記」にしても、それらの作品にSF的な要素はほとんど無いと言ってもよく、人気があるのは、単純に筋書きであったり、登場人物が魅力的であるからだと思われます。
 「海底二万里」もそうです。地上を毛嫌いし、海底を愛するネモ船長の一筋縄でいかない人間性、どこか影を湛えた“海の男”らしさは、大人になって読み直して初めて気づくものかもしれません。

 「海底二万里」については大人になって気づいたことがもう一つあります。重要なのことだと思うので書きます。「海底二万里」の20,000マイルは、海の深さではなく、距離を指しているということです。いわれてみれば、20,000マイルは海里だとして37,040km。地球の直径は12,000kmだから、20,000マイルを潜ったら、地球の反対側を突き抜けて宇宙に到達してしまいます。つまり、ヴェルヌの2万里は、ネモ船長とアロナックス博士たちが移動した航海距離を指していたのでした。
 え! 当たり前? 気づいてましたか? お恥ずかしい……。

「海底二万里」(上・下巻)
著者:ジュール・ヴェルヌ
訳者:村松潔
発行:集英社文庫
価格:上巻693円、下巻781円(税込)


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