海を越えてやってきたワタリガニ 【船厨- レシピ】
先日、筆者のボートの遊び仲間であった友人からスマホに便りがありました。「であった」と過去形にしたのは、いまはフランスで結婚され、ご当地のワイナリーで夫婦仲良く暮らしており、なんだかすっかり遠い人になってしまったかのような感覚でいるからなのですが、それでも彼女のフランスでの様子を知るのが楽しみでもあります。
「お久しぶりですー。どーでもいいことなんですが……」ではじまる便りには、食べることが大好きな夫と、食事に関する日本語なら覚えてくれるだろうとネット配信で日本のドラマをフランス語字幕で見ているのだけれど、スイーツをテーマにしたあるドラマで、主人公が最後に口にする決め台詞「甘味のみぞ知る」ってフレーズを何回教えても“カニのみそ汁”としか言えないのだ、とありました。
ノロケですか。本当にどーでもいいことですね。で、どーでもいいのですが、最後に「日本に帰ったらカニのみそ汁たべたいです」というひと言が添えてあり、うんうん、わかるわかると、筆者もそこには大いに共感し、その便りが届いたその日にのうちに、カニのお取り寄せに勤しんでしまったわけです。
カニは今回もガザミ(ワタリガニ)を選びました。ワタリガニの蘊蓄については少しだけ「ワタリガニのクリームパスタ」でも触れたことがあるのでここでは省きますが、国産ワタリガニはいまや高級食材です。かなりの値が付いていたので、今回は輸入品に頼った次第なのですが、味噌汁の具材にするには、それでも申し分ありません。
出汁はワタリガニ以外に使いません。余計な具材は使わず、普通につくります。椀から立ち上る湯気に混ざったワタリガニ独特の香りにウットリ、一口すすって風味を堪能。最後はいつも通り、手を汚しながらワタリガニ独特の味わいにむしゃぶりついておりました。
その美味さは、「蟹のみぞ知る」ってところです。