風をはらんだ帆の快味「トム・コリンズ」 【レシピ- 船厨】
きりっとしたジンベースのカクテルは夏の海に合いますね。帰港後、クラブハウスのカウンターで仲間と釣り逃がした魚について法螺を吹きながらやる酒にもぴったりです。といっても、我が国のマリーナにはバーが皆無といってよく、実はヨットクラブ、マリンクラブの機能を大いに低下させている気もする、というのは冗談でありますが、実際のところ、車でやってきて日帰りで帰るオーナーさん達には不要ですね。
さて、海辺で飲むドリンクについては、ヘミングウェイに学ぶのが間違いありません。彼が愛したカクテルといえば、フローズン・ダイキリが有名ですが、その他にも、さまざまなお酒が小説に登場していて、それらは「ヘミングウェイの酒」(オキシロー著/河出書房新社)という本にもに詳しく紹介されています。
トム・コリンズもそのひとつです。へミングウェイは気に入ったカクテルを自分好みにアレンジすることが多かったらしいのですが、同著によると、彼はトム・コリンズにソーダではなく椰子の汁を使うのを好んでいたといいます。なるほど、「海流のなかの島々」では主人公のハドソンはこの自己流トム・コリンズを好んで飲み、その味を「よく風をはらんだ帆の快味を思わせる酒だ」などと表現しています。
日本のマリーナにバーは少ないけれど、ボートやヨットはこの上ないそれとなります。もちろんバーテンはボートオーナーです。たまには船に泊まる覚悟で、海流の中の島々に思いを馳せながら、夏の宵を美味しい飲み物と過ごされてはいかがでしょう。
世の中にはノンアルコールのジンだってあります。アルコールが苦手な人のためにノンアル・トム・コリンズも作れそうです。