「春を知らせる魚」をいただきましょうか。 【レシピ- 船厨】
メバルは一年を通して楽しめる釣魚の一つ。餌で、ルアーで。防波堤で、もちろんボートで。釣りをした経験のある方も多いことでしょう。
このメバルの呼び名ですが、漢字では「眼張」、または「目張」と書きます。これは眼が大きく張り出していることからつけられた名前です。もう一つ、お寿司屋さんの湯飲みによく書かれている漢字では「鮴」と書きます。これは岩陰や海藻からあまり移動しない習性を、休んでいると表現したもの。
さて、メバルの生物的特長のひとつに、魚の中では数少ない「胎生」であることがあげられます。受精した卵は雌の体内で孵化し、卵巣を食べながら稚魚になり、海で生きられる状態になって、胎内から飛び出していくのです。そして春から夏にかけて10cmぐらいにまで育ち、約3年で20cmほどにまで成長して成魚となります。
成魚に満たないメバルをまるごと食べたりするのも、まあ、釣れてしまったら、ありかもしれません。でも、やはり食べるのはある程度のサイズの成魚になってからがいいかなあ。
20cmサイズのメバルの背に包丁を入れ、これを丸ごと唐揚げにしてみました。小魚のバリバリした食感に比べて、こちらはバリバリにフワフワが加わった極上の食感。そして味も最高、見た目にしたって豪快です。
本欄がときどき頼りにしている、江戸前の目利きの書によれば、メバルの旬は夏ということになっています。でも、メバルには「春告げ魚」との雅称もあるのですよ(地方によって、ほかの魚を指すこともあるけれど)。シーフードの食卓に春を演出してみましょうか。