鯨をボーカルに迎えてセッションしたサックス奏者 「WHALES ALIVE〜鯨の詩」 【キャビンの棚】
まもなく、沖縄・座間味の海に、ザトウクジラたちが姿を現しはじめます。座間味島のホエールウォッチングのシーズンは1月から3月ごろまで。彼ら社は繁殖と子育てのために温かい座間味島の海にやってきます。
ハワイのマウイ島もザトウクジラにとっての子育ての海として知られています。こちらも座間味とほぼ同時期に、ホエールウォッチングのハイシーズンとなります。
さて座間味島とマウイ島は温暖な海であることの他に、共通点があります。それは、かつては捕鯨基地であったこと。そして座間味もマウイも、いまでは、これらの鯨をいたわり、観光資源として共存の道を歩んでいることです。
かれこれ30年ほど前になりますが、マウイ島に本部を置く、パシフィック・ホエール・ファウンデーションという団体のチェアマンから話を聞いたことがあります。
チェアマン氏によると、ザトウクジラは「唄う」のだそうです。その唄は、たとえば繁殖期の始めに唄うものと、その終わりの時期に唱うものとでは、かなり異なっているらしいのです。また、流行もあって、5年もすると、元の唄とは全く異なる小節の組み合わせの唄ができあがるのだといいます。しかも古くなった唄は二度と唱われることがないそうです。
ここでご紹介するのは、そんなザトウクジラと、サックス奏者、ポール・ウインターとのセッションとして話題になった「WHALES ALIVE」というアルバム。「鯨の詩」と邦題が付けられたそのアルバムの曲は、当時テレビのコマーシャルでも流れるなどして話題になったので、覚えている方もいるでしょう。リリースは1987年。
古いけれど、ぜひ聞いてみてください。35年が経った今でも、最高の部類に属する海の音楽なのではないでしょうか。ポールインターの実力もさることながら、なにしろ、鯨が唄っているのですよ。しかも素晴らしい歌声です。少しせつなくて泣けます。心打たれます。心が躍りもします。それは「海」そのものです。
先述したチェアマン氏の言説をそのまま受け取れば、鯨たちにとってその唄は「流行遅れで、二度と唄われない」ということになるかもしれませんが。
「WHALES ALIVE〜鯨の詩」
Paul Winter/Paul Halley
レーベル:Living Music
参考価格:2,519円(税込み/輸入盤)