活きナマコに初挑戦。口に入れたら、元の姿は忘れた。 【レシピ- 船厨】
月並みな言い回しですが、「いったい、誰が最初に口にしたのだろうか」という生き物の代表格ではないでしょうか。ナマコです。漢字で“海鼠”と書きます。いったい、どこがネズミなのでしょう。どうしてもネズミには見えません。ネズミに失礼です。
いわゆる無脊椎動物にくくられるのですが、なんとも形容しがたい形です。竹を縦に割って作った足踏みみたい。海から上げてみると、その体はカチカチに固くなったり、ぶにょぶにょに柔らかくなったり、伸びたり縮んだり。
ここまで読んだら、普通は食べる気なんて起きません。「ああ、ナマコが食べたくなった」なんていう人はよほどの物好きだと思います。
さて、つい先日のことですが、このナマコを獲る北海道の漁師さんにお願いして、漁の現場に立ち会う機会を得ました。ナマコは桁曳き網で獲ります。いわゆる底曳き漁です。網のついた、大きな熊手のような漁労器具を使って獲っていくのです。
この日はたくさん獲れました。といっても、この漁師さんが所属する漁協では漁獲規制があって、どんなに多くても1日に獲る量は200kgと決められています。意外にも、それほど大切にされている海産物ということなのです。
漁が終わって、漁師さんから、ナマコを少しお裾分けしてもらいました。こうして、これまで、酢の物などお店で料理として出合っただけのナマコを自分でさばくことになりました。裁くのは思ったより簡単です。そして楽しかったりもします。腹を切り裂いて内臓を取り出して、ぬめりを取って、切る。
で、出来上がったのが、このナマコの甘辛煮です。ほかには酢の物にもしました。気味が悪いと思っていたナマコもここまで来れば大丈夫です。コリコリとした歯ごたえがたまりません。美味いです。
海の生き物は偉大です。