カレイの料理で思い出す、フランス語と津軽弁 【レシピ- 船厨】
ふだんは使い慣れた外来語の語源など考えることなどしないものですが、気になって調べてみると、意外な発見があったりして楽しいですね。
ムニエルをつくりました。日本でも家庭料理として、けっこうポピュラーなフランス料理だと思うのですが、フランス語でも学んでいない限り、その言葉=ムニエルが「ムニエ」の女性形である、なんてことは、知らないままだと思います。
「ムニエ」は「粉」や「粉屋」の意味なんだそうです。そして「ムニエル」は、「粉屋のおかみさん風」ということになるのだそうです。これまで、なんとなくオシャレな存在だった「ムニエル」が、ぐっと身近で親しみのある料理になるってものです。
さて、筆者は以前、青森県の西津軽の海で、ある漁師の刺網漁を取材したことがあります。漁は父と息子、2人の漁師で行っていました。漁を終え、男が港に戻ると、2人の奥さんが家から駆けつけて、網からカレイを外す作業に加わりました。
その作業が一通り終わると、大漁であったカレイを発泡の箱に詰めながら「持って帰れ」と勧めてくれたのです。奥さんたちは、“これでもか”というほどカレイを箱の中に重ねてくれました。役得です。
というわけで、その翌日、我が家の台所では、こちらも家族総出でカレイとの格闘が繰り広げられました。さばいた後は、数日にわたってカレイが食卓に並びます。刺身や煮付けなどに加えてムニエルも作りました。それがまた美味しいったらありゃしない。
そして、粉屋のおかみさんならぬ、漁師のおかみさんの気風の良さと、どこかフランス語を彷彿とさせる美しい津軽弁を、同時に思い出した次第です。