ソルティドッグ。でも、塩まみれなのは犬ではなく人なのです 【船厨-レシピ】
犬を飼い始め、一緒に海岸を散歩するようになりました。見知らぬサーファーが走って海の中に入っていく姿を見て、犬は大はしゃぎで後を追いかけようとします。波が打ち寄せてくると、飛び跳ねながら器用にそれを避けます。ところが飼い主のほうは上手く波を避けることができず、たいていは靴を濡らします。家に帰って、犬の足下を洗ってやりながら、自分の靴の塩出しをする羽目になるのです。ソルティなのは犬ではなく、いつも飼い主の方です。
さて、「ソルティドッグ」というカクテルがあります。その言葉の由来を想うとき、おそらく多くの人は海で塩まみれではしゃぐ犬をイメージします。もしかしたら、ソルティという言葉から、グラスの縁の塩を思い浮かべる人もいるかもしれません。
でも「ソルティドッグ」とは本来、「船乗り」を指すイギリスのスラングなのです。塩まみれになって働き回る船乗りたちの姿を、駆け回る犬にもじってその名が付けられました。
もともとはそんな船乗りたちが愛飲していたのだと思われます。ソルティドッグ発祥のイギリスでは、もともとジンベースでライムジュースを入れたものだったらしいのですが、そのカクテルがそのまま「ソルティドッグ」と名付けられ、時を経て、またアメリカで流行して後、いつの間にか中身はウォッカをグレープフルーツジュースで割り、グラスの縁に塩を着けたスノースタイルのカクテルに変わりました。
人によっては「酒の味がしない」などと敬遠するかもしれませんが、そもそもカクテルは酒の味を消しながら酒を楽しむことに存在価値があるのです。たまには船を出さずに、デッキでソルティ・ドッグでも飲みながらのんびり過ごす一日があってもいい。イギリスで生まれた本来の「ソルティドッグ」と飲み比べてみるのも一興かもしれません。
事情があって酒を飲めない方は、ウォッカを入れず、グラスの縁に塩をつけたグラスにグレープフルーツジュースだけを注げばよろしい。充分にソルティです。