強い絆で結ばれ生まれたボートの素材 【海の道具】
小型ボートのハル(艇体)の素材として、最もポピュラーなのはFRPでしょう。日本語で言えば、繊維強化プラスチック。ボートの場合で言えば、ガラス繊維と樹脂を複合的に組み合わせた素材で、繊維の破断に対する強さと樹脂の強度、加えて成型のしやすさがボートのハルの素材として最適なのでしょう。
というわけで、今回は道具ではなく“材料”のお話です。
波のある時にボートを出すとよく判るのですが、水の上で跳ねると着水時、いかに水が固いかを実感することになります。その時の音と衝撃は、ボートが真っ二つになるのではないかとビクビクするほど。ところがFRP製のハルはそれをものともせずに波を切り裂き、圧して進んでゆきます。実に頼もしい限り。
ハルの作り方は、まず、船形を作り、その内側にワックスを塗ります。その上に色付きのゲルコート(離型剤を兼ねた下地=不飽和ポリエステル樹脂)を塗り、そこからガラス繊維と樹脂を何層にも積層していきます。その過程の中で、ボートの背骨ともいうキール(選定を支える部材=竜骨)などもガラス繊維と樹脂で包んだりします。
柔らかくしなやかなガラス繊維と、硬化する前のサラサラな樹脂をみていると、こんなものが何であんな硬いものに化けるのか不思議でなりません。ガラス繊維は別名クロスと呼ばれていますが、まさに細いガラス繊維が整然と織り込まれていたり、ランダムに交差しあっています。そのガラス繊維の隙間に樹脂が入り込み、それぞれがガッチリと結合して、高い強度を生むことになるのです。
性質の異なるものがそれぞれの特徴を出し合って相乗効果を、といったところです。
「うむ、まるで我が家のようではないか」
と頷いているお父さんの思いが、決して一方通行でないことを祈ります。