惜しみなく手間を掛けて育つ、鹿児島のカンパチ。 【ニッポンの魚獲り】
鹿児島県は養殖が盛んで、なかでもブリとカンパチはともに日本一の水揚げ量を誇っています。
その鹿児島のブリといえば、県の北西部に位置する長島町が有名です。長島町は九州本土と橋で繋がる長島本島を中心に、伊唐島、諸浦島、獅子島など23もの島々から成ります。天草と九州本土に囲まれた、それらの陸地が作りだす速い潮と、年間を通して変化の少ない海水温は、この海域を、ブリをはじめとする活魚の優れた養殖場に育ててきました。
一方のカンパチは、県南東部の大隅地区が有名です。こちらは外海に近い環境で、潮の流れや、桜島を要する錦江湾の栄養豊かな海水が一流のカンパチを育んでいます。
さて、幸洋水産は、ブリ養殖が盛んな方の地域、つまり長島町で、あえてカンパチの養殖を主業とする経営体です。現在は社長業をご子息の洋一さんに譲り、養殖業や経営のサポートに回る前社長の吉武淳一さんにお話を聞きました。
「周りと同じことではなく、何か違うことをやってみようと、長島で始めたのがカンパチの養殖です。この海域はカンパチにとっても条件が整っていて、質の高いカンパチを育てることができます」
早朝からカンパチの出荷作業に同行しました。夜明けとともに、港内と言って良い、目の前にある出荷サイズに育ったカンパチが泳ぐイケスへと作業船〈第二十八幸洋丸〉を走らせます。
カンパチは稚魚から1年半から2年をかけて3〜4kgの出荷サイズに育てます。そのカンパチが泳ぐイケスから、さらに出荷専用のイケスにスライダーを利用して移し替え、最終的にはドライブ船を使用して岸壁に移動し、そこでさらに自社の運搬車に移し替えて出荷します。
出荷作業が終わったときには、すっかり陽は高くなっていました。次は船を変え、港外にある養殖イケスで給餌作業が行われました。
「年間を通して、消毒や網の洗浄、餌の質や量など、どれほど惜しみなく手を掛けることができるか、それが良質なカンパチを育てる鍵ですね、餌の高騰など苦労もありますが、それでも順調に成長してきました」と、淳一さんが教えてくれました。
吉武さんをはじめ、幸洋水産のみなさんが惜しみなく手間を掛けているカンパチが長島町の海で順調に育っていきます。