秋になると秋刀魚が気になって夜も眠れなくなります。 【レシピ- 船厨】
秋になるとどうしても秋刀魚(サンマ)が気になります。今年は豊漁なのか、不良なのか。お値段の方はいかほどか。特に晩秋に水揚げされるサンマは脂がのってとにかく美味い。刺身も美味い。焼いても美味い。どうやっても美味い。それがサンマです。
人気の魚である割に、釣魚としてはそれほど注目されません。運良く大群に出くわせば簡単に釣れるようですし、北海道などでは岸に近づくときがあって、港の中でも釣れることがあるようですが、それが新聞やテレビのニュースになるぐらいなので、やはり趣味での釣りの対象としては難しいのでしょう。
では、どうやって獲られているのかというと、「棒受け網」という漁法がほとんどのようです。夜間に船の片舷から網を張った2本の棒を張り出し、集魚灯を利用しておびき寄せた秋刀魚の群れを一気に掬うのです。この漁法のおかげで漁獲高が一気に高まり、サンマはマグロに匹敵する国民の魚(筆者の独断)となったのだと思います。
また集魚灯が使われる以前には、流し網(ただ網を潮に任せて流す)が主流。さらに前には、漂流物に卵を産み付ける秋刀魚の習性を利用して、藁の束などを海に浮かべそこに集まった秋刀魚を手づかみで獲るという漁法もあったようです。その漁法のことは吉村昭の小説「破船」で知ったのですが、小説の内容はちょっと暗い話ではあります。
有名な小咄の「目黒の秋刀魚」にしてもそうですが、とにかく、サンマにはかつては下賤な、いまでは庶民的なエピソードがなにかとつきまといます。時代の移り変わりとともに、サンマは秋その物を指す言葉と言いえる風情のある存在となりました。俳句の季語になるぐらいです。なんとも日本的で素晴らしい。
さて、今年は手軽にサンマを蒲焼きにして、ご飯の上に載せてみました。皿に盛り付けてみたので「蒲焼きライス」としましたが、器は丼でもかまいません。そうなると「蒲焼き丼」になります。その時の気分でどうぞ。