「僕の愛は、海より深い」と真顔で言ってみる。 【キャビンの棚】
海という言葉は、「広さ」や「深さ」を表すときによく使われます。かつては調子に乗った海の男どもが、女性に愛を伝えるときに時にしばしば使いました。よくわからないけど、世間では海はロマンティックなものだと思われていたのです。いや、いまでもそう信じたいのです。あんなにしんどいところであるのに関わらず。
用例としては、パートナーを置いてけぼりにしてのヨットやボート通いが続いてしまい、それを責め立てられるようなとき、「君の心は海のようだ。ゆるして」とか、あるいは相手の目をみつめ「君の瞳は海のように深い。お願い、大目に見て」などといってその場を切り抜けたりします。言葉だけで効果が無ければ、「How Deep is the Ocean?」なんかを歌い上げます。かのビリー・ホリデイも歌っていたジャズのスタンダードです。
「海のように深く。空のように高く。嘘など言うものか。それほど君を愛している」──、超訳するとこんな感じでしょうか。
話は飛びます。ジャズに詳しい方にとっては当たり前のことなのかもしれませんが、同じ曲なのに何故、演奏する人によって、ここまで雰囲気が異なるのか理解に苦しむことがあります。
いま、編集部のキャビンの棚には「How Deep is the Ocean?」が納められたCDが4枚ありました。ビル・エヴァンスが2枚、マイルス・デイビスが1枚、そしてエリック・クラプトンが1枚。ビル・エヴァンスの1枚は“名盤”と謳われる「Explorations」です。でも、ジャケットに印刷された曲目をチェックでもしない限り、これが「How Deep is the Ocean?」だとは気づかないかもしれません。美しさはずば抜けているんですけどね。
話しを戻します。やはり極めつけはあなた自身による「How Deep is the Ocean?」ではないでしょうか。ギターでも抱いてエリック・クラプトンのように渋く“不器用な男”風にこの曲を弾き語ろうではありませんか。もしくはビル・エヴァンスのようにピアノを奏でるか。
時代錯誤? その通りです。ずっこけること請け合いです。本当は、つべこべ言わずに、大切な人とは一緒に海に行けば良いのであります。
そういえば、まもなくバレンタインデーですね。健闘を祈ります。