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やりがいって大切。 どんなときも漁を続けられるのはそれがあるから 【ニッポンの魚獲り】

 兵庫県の播磨町でマダイの刺し網漁を営んでいる大角真也さんは、播磨町でも数少ない漁業後継者の一人。毎晩、潮止まりの時間を見計らい漁場へと船を走らせます。

 「マダイの刺し網はこの地区では定番の漁です。その昔はノリ網が多かったと聞いていますが、それが少なくなってからはマダイの刺し網が一番多くなったそうです。一攫千金という漁じゃなくて、毎日海に出てコツコツ魚を獲る漁ですから、しんどい時もありますよ。それでも漁場は近く一年ほとんど変わらずに漁ができるので、他の地域の人に比べると肉体的な負担は軽い方だと思ってやっています」


大角さんの刺し網漁。漁の善し悪しは網を入れる場所次第だという

 「子供の頃に遊びがてら船に乗ったぐらいで、まともに手伝ったことは一度もなかった」という大角さんですが、父親の久男さんと一緒に漁に出て作業のイロハを学びました。
 「親父から学んだ大切なことでひとつあげるとしたら、常に工夫をすることかな。こうしたら獲れるんじゃないか。そうしたことを考える。なぜ獲れなかったとか、逆に獲れたときも『なんで?』と疑問を持ちながら漁をする」

 播磨でのマダイの刺し網漁は日が落ちてから行われ、潮止まりの時間に網の投入、回収の作業が行われます。限られた時間での作業になるため網を入れる場所の選択がその日の水揚げに反映されます。刺し網の長さは1キロ弱。幅は1寸目が50個分とのことで、おおよそ1.5m。これを水深10m未満の浅い場所に仕掛けていきます。 
 「鯛は目がいいので昼間に仕掛けても全然かからない。あとは潮の流れ次第なので、夜に多くて3回、少なくて1回仕掛けるだけです」
 初夏は500〜600グラムのサイズが中心になるので数多くの鯛を捕り、秋から冬にかけてはキロオーバーの大型を狙うのが播磨の刺し網漁です。

海峡の潮流にもまれた明石のマダイは全国的に有名

 「魚だけを獲っていればいい時代ではなくて、いかにいい魚を供給できるか、水揚げ金額を安定させられるか、そうしたことにも目を向けながら漁をしていかなければいけない。だらだらと海に出ても経費がかさむだけだしね」

 日本中にその名が知れた明石の鯛を追う大角さんは、この日も1回の漁でしっかりと水揚げを確保して港に帰港。

大角さんの〈大真丸〉(DX-40A)。「自分の船を持って一人前」と決意して得た愛艇

 「この漁に一発大逆転はない。毎日コツコツが大切なんですよ」
 そう話す大角さんからは、この播磨の海で刺し網漁をしっかり受け継いだ「漁師」の風格がにじみ出ていました。


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