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海の宝物「モズク」養殖に従事する若い海人たちの「夏休み」 【ニッポンの魚獲り】
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海の宝物「モズク」養殖に従事する若い海人たちの「夏休み」 【ニッポンの魚獲り】

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 沖縄本島の北端・辺戸岬の北西、約40km の沖合に浮かぶ伊平屋いへや島(伊平屋村)。この島の主な産業はサトウキビを中心とする農業と漁業です。漁業は特にモズク養殖が盛んで、島育ちの多くの若者がモズク養殖に取り組んでいます。

 この島でモズク養殖を営む海人うみんちゅ・嘉納直彦さんに出会いました。伊平屋ではみんなが下の名で呼び合いますが、嘉納さんは直彦ではなく、なぜか、“サブロー”と呼ばれています。直彦さんが、親戚のサブローさんに似ていたことから、小学生の頃から当たり前のようにサブローと呼ばれるようになったそうです。なんとも無茶な気のするあだ名の由来ですが、サブローさんはもう達観していて、そんな由来を楽しそうに話してくれました。

 さて、モズク養殖は毎年11月ごろから始まります。最も忙しくなる収穫期は4月から6月まで。7月には、網も回収し、サブローさんたちにとっては長い夏休みとなります。
 伊平屋を訪れたのは、そんな夏休みの期間中。サブローさんは「ほんの小遣い稼ぎだけど」といって仲間を自分の船に誘い、潜水漁へと出かけました。
 取材当時、〈W-43AF〉というヤマハが開発したばかりの大型和船の写真を撮るために、サンゴのきれいな場所へと船を走らせたのですが、実際に魚が獲れるのはもう少し深いところ。きれいな海での撮影をひと通り終わらせると、深いポイントに移動しました。

船に見張りを一人残して次々と潜り、魚を獲ってくる

 若者たちは水中銃を手に潜っていくと、次から次へと魚を獲ってきます。獲れたのは沖縄特有のイラブチ(ブダイ)、アカジン(スジアラ)など色とりどりの魚たち。もちろん、これも「仕事」に違いはありませんが、海人たちはとても楽しそうでした。仲間と一緒に魚を捕まえるのは、やはり“夏休みならでは”の楽しみなのです。

潜水して獲った魚は無造作にクーラーボックスに放り込まれていった

 ところで、モズク養殖では網を海中の苗床に設置します。日光が十分に届く白い砂地の海底で光合成が促進されてモズクが育つのです。さらに生育の状況によって網を少し水深のある場所へと移動させます。網を設置する作業は実は潜水して、手作業で行います。
 潜水漁を終え、居酒屋で泡盛を酌み交わしているとき、サブローさんと一緒に潜水漁をしていた若者のひとりが「実はこの前、死にそうになってさ」と話を聞かせてくれました。
 その日は天候の変化が予想されたのですが、“もう少しの間は大丈夫だろう”と潜って作業をしていたときの話でした。

 「ふと気づいたらアンカーが水中に浮いたまま船が流れていてさ、慌ててアンカーを水中で追いかけたけど追いつけない。諦めて浮上してみると海は大荒れで陸も見えなくなっていて、買ったばかりの船はどんどん流され、遠ざかっていく。エアータンクだとか身につけていた潜水機材をぜんぶ外して、うっすらと見え始めた島へと向かって荒波の中を泳いで。他の船が通りかかったら助けてもらいたかったけど、近くで作業をしていた他の船はすべて港に戻っていて。死ぬかと思った」
 彼は泳いでいる間、「絶対に諦めるな」と自分を鼓舞し続け、へとへとになって砂浜にたどり着きました。しばらく脚の震えが止まらず、歩けなかったといいます。船は、陸に打ち上げられることもなく、翌日、奇跡的にほぼ無傷で回収できたそうです。

伊平屋島を取り囲む美しい海が仕事場

 本人はもちろん、そんな話を大笑いで茶化していたサブローさんも、他の仲間たちも、海の怖さを知っています。潜水作業中はいつも危険と隣り合わせで、それでも彼らは海での仕事を続けています。
 私たちがスーパーで見かける、あの小さなパックに入ったおいしい「モズク」は、海人たちが時に命がけで育て上げた、海の「宝」なのです。


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ヤマハ発動機の公式アカウントです。 「海やフネの近くで人生を楽しみたい、日常生活に海の香りと風を吹かせたい」という皆さまに、ほんのり潮気が漂う読み物や写真をお届けします。 18年間、海を愛する人達にお届けしてきたメールマガジン「Salty life」から引っ越してきました。