ホクホクした甘味の中に隠れた愛情 「海扇雑炊」 【レシピ-船厨】
北国の貝として人気のホタテ。漢字でかくと「帆立」が一般的ですが、「海扇」と表記されることがあります。確かに扇に似ていますね。海の扇。
ホタテはほとんどが海中で稚貝から育てる養殖で生産されています。海に出ていって、大きな熊手のような漁具で海底から獲る漁法もありますが、これは「地捲き」と呼ばれていて、稚貝を海にばらまき、自然に育った成貝を桁引きで採捕するのです。これもまた養殖の一種ですが、そのシーンは勇壮で、捕れる貝は甘みが強く、旨い、とされていたりします。
ホタテは泳ぐ貝としてもよく知られています。なんと、漁場であっというまに大量のホタテが姿を消してしまうこともあるらしいのです。あの大きく立派な貝柱(いちばん美味しい部分なのですが)を使い、勢いよく貝を閉じると貝の耳(ここも美味しいんです)と呼ばれるところにある穴から水をジェットのように吹き出し、その反動で移動するというのです。ときに一晩で500メートルほど移動することもあるそうです。
ならば一般的な養殖の方が手っ取り早いではないかと思うところですが、そう簡単な話でもなく、海水温の変化や密植などによって大量斃死を引き起こすこともあり、みんな苦心しているのです。これはホタテに限った話ではなく、養殖漁家は常に変化する自然と向き合い、大切に守りながら魚や貝を育てています。だからこそ、そこに愛情が注ぎ込まれるのです。ホタテが発する甘さ、美味さは、そんな養殖家たちの愛の結晶なのですよ。
そんなホタテを味わうのなら新鮮なものに越したことはないのですが、ホタテの強みは産地冷凍でもほとんど味が落ちないところです。ということで近所のスーパーでも旨いホタテが手に入るわけです。
寒い夜を迎えます。養殖家たちの愛情を思いながら、ホタテ独特の香りと甘みを大いに愉しみたいものです。