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必ず海からやってくる─ ゴジラに襲われるとは縁起がいい。 【キャビンの棚】

 「生誕70周年記念」という景気づけで公開中の『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』が日米で絶賛大ヒットです。ここの読者もすでに観た人は大勢いるはずです。『ALWAYS 三丁目の夕日』や『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の山崎貴監督が、大人も子どもも楽しめるように、まっすぐでわかりやすいストーリーにしたのが狙い通り奏功したのでしょう。なんといっても主人公神木隆之介さんとヒロイン浜辺美波さんの出会いは「衝突」、一時代の少女漫画の王道ですね(笑)。

 ということで、今回は『ゴジラ-1.0』を鑑賞してきたので、そのプログラムをキャビンの棚に並べることにしました。

 さて、ゴジラは必ず海から襲来します。そして巻頭でたいがい船を襲います。「水爆大怪獣映画」と銘打った1954年の第一作は、ご承知の通り、その年の春にビキニ環礁で行われた水爆実験で、焼津漁協所属の遠洋マグロ漁船第五福竜丸が被曝した事件に触発されて映画が企画されました。すべてのゴジラ映画のマスターです。この作品では小笠原近海で貨物船が救難信号を発した後、沈没したことがゴジラ登場の予兆として描かれました。

 2016年の『シン・ゴジラ』では羽田空港沖で無人となって漂流するプレジャーボートが未知の巨大生物の存在をほのめかします。

 そして本作品。時代は第二次大戦末期、特攻のゼロ戦の主観映像から始まり、ダイバート(緊急着陸)した大戸島でゴジラに襲われます。この場面ではボートは描かれないのですが、ゴジラも小さいんです。ガンダム、あるいは『ジュラシックパーク』的サイズ感。ところがやっぱり、終戦後すぐからビキニ環礁で繰り返された核兵器実験のせいで立派に巨大化した後、アメリカの艦船を次々と餌食にしながら日本へ、焼け野原からの復興が緒に就いたばかりの東京へ近づいて来るのです。

 え、船が襲われることをテーマにするなんて、「海の時間です。」としては縁起でもない!ですか。まあ、そう言わないで。

 第一作ではゴジラが銀座を蹂躙します。そのとき4丁目交差点の和光の時計塔も、6丁目の松坂屋銀座店もみんな踏みつぶされ、なぎ倒されてしまいました。「なんてことッ」と両社は東宝にクレームをつけたらしいのですが、映画は大ヒット。その後のシリーズからは、両社に限らず「ウチもゴジラに壊してもらってください」というリクエストまで来る始末。だから、縁起がイイんです。縁起物なんです。

 ちなみにシン・ゴジラが破壊しまくった東京駅周辺も、現在も進行中の東京駅周辺のオフィス街再開発計画に基づいて、現実に全体が完成する前にあらかじめ壊してしまったものなんです。いやあ、めでたい!

 プログラムは日本版の実写全ゴジラシリーズ29作の解説付です。

「ゴジラ-1.0」劇場プログラム
編集:東宝ステラ
発行:東宝
価格:1,100円(税込)

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