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ライダーは二度エンジンをかける【エンジンがかかった瞬間 - vol.4】

ヤマハ発動機社員による「#エンジンがかかった瞬間」投稿企画。
noteコンテスト企画のテーマに合わせて、ヤマハ発動機社員がそれぞれの心のエンジンについて綴ります。

第4回目は、ブランディングのお仕事をしている入社3年目の女性社員MNさんです。

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私は、モーターサイクルに乗る時に「エンジンがかかる瞬間」は二度あると思っている。

一度目は、ギアを介してクランクシャフトが回転し、マシンが眠りから覚めるとき。つまり、文字通り「バイクにエンジンをかける瞬間」だ。

では二度目はいつか?
その瞬間が私に訪れたのは、つい最近のことである。

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仕事で新しい取引先の方と名刺交換をする際、「バイクメーカーで働くとなると、やはり入社するには二輪免許が必要なんですか?」と質問されることがたまにある。その答えは“No”だ。ヤマハ発動機への入社に二輪免許の保有 ・取得はマストではなく、また入社後も(配属される部署にもよるが)、「必ず取りなさい」と会社から強制されることはない。

ただ、職場の先輩や上司が週末にツーリングを楽しんでいる話を聞いたり、お客様が人生の一部かのように当社のモーターサイクルを愛してくれる姿を見たりすると、「自分も乗ってみたい!」という気持ちは当然芽生えてくる。事実、入社後に仕事の合間を縫って教習所に通いだす社員も少なくない。

そして私も、入社後に二輪免許をゲットした社員の一人だ。初めて扱う重量約200㎏のその乗り物は想像の何倍も重く取り回しにはとても苦労したし、両手両足バラバラの動きをタイミングよく行わなければならない操縦方法には頭がこんがらがったし、途中何度も心が折れかけた。それでも入校してから数か月後の2020年初め、晴れて普通二輪免許を取得することができた。

しかし、そのすぐ後に突如として現れた新型コロナウイルスによって、ツーリングに行くどころかおうち時間を過ごさざるを得なくなったこともあり公道デビューのタイミングを逃した私は、そのうちバイクに乗る感覚も少しずつ忘れていき、教習所での努力の甲斐もむなしく気づけばいわゆる「ペーパーライダー」になっていた。

バイクに乗りたいという気持ちよりも乗ることに対する不安が勝るようになってしまい、「何とかせねば!」と思い続けていたところ、転機が訪れたのは今年の10月。当社が安全・普及活動として開催するライディングスクール「ヤマハ ライディングアカデミー(YRA)」のひとつ「大人のバイクレッスン」が本社駐車場で開催されることになったのだ。

このプログラムは初心者・リターンライダー向けに展開されており、「免許を取ったばかりで公道デビューには少し不安がある」「久し振りにバイクに乗ってみたいけどスキルに自信がない」などといったお客様が、経験豊富なインストラクターによるサポートのもとバイクを安全に愉しむためのスキルを学ぶカリキュラムとなっている。
■大人のバイクレッスン:https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/yra/otona/
(社員が自社の活動を紹介する以上はしっかりと概要を説明する必要があるので、やや宣伝じみた文章になってしまったのは許してほしい。)

とにかく、「脱・ペーパーライダーにはもうこれしかない!」と思い立った私は、藁にも縋る思いで応募受付が始まったその日に申し込んだ。

そしてレッスン当日、会場には様々なバイク経歴を持つ参加者が集まった。私のように二輪免許取得後なかなかバイクに乗るタイミングを掴めずペーパーライダーになってしまった参加者もいれば、人生の転機に愛車を手放して以来何十年ぶりにバイクに乗るという参加者もいた。

レッスンで乗車するのは「XG250トリッカー」というバイク。スリムな車体かつ車両重量が125kgと比較的軽量なのが特徴で、約200㎏の教習車にヒーヒーした苦い記憶を持つ私のような女性でも扱いやすいモデルだ。 (※現在は生産終了しています。)

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乗車姿勢や乗車・降車時のポイントや操作方法を再確認したら、いよいよ一人ずつ車両にまたがってキーを回し、エンジンを始動させていく。キュルキュルというセルスタート音に続いて、ドッドッドッドとエンジンの心地いい振動がおなかに響いてくる。ああよかった、ちゃんとエンジンをかけることができた。緊張と不安でいっぱいだった心が少しずつ和らいでいくのを感じた。

ここから発信停止の練習、S字・クランクなどのコーナリングの練習をしていくのだが、このレッスン、とにかく褒められる。発進できるだけで、線に合わせてブレーキできるだけで、うまく曲がれるだけで、インストラクターたちからありとあらゆる言葉で称賛されまくる。大人になると人から褒められる機会も少なくなるから、それはもう自己肯定感が爆上がりする。(しかもこの優しいインストラクターが、「元全日本チャンピオン・トップライダー」など実はものすごい肩書を持つ人だったりするからまた驚きである。)

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1日を通して行われる「大人のバイクレッスン」は、午前に一通りの操作・走行方法を学んだあと、午後にインストラクターに先導と最後尾を走ってもらいながら公道に出るショートツーリング体験の時間が設けられている。そう、二輪免許取得から1年半、いよいよバイクでの公道デビューが叶うときだ。

小雨降る午前から一転、ツーリング開始前には青空が広がっていた。この日のゴールはレッスン会場から約9km先の福田漁港にある「渚の交流館」。私にとってはぶっちゃけ見慣れたあの福田の海だ。それでも、片道たった20分の目的地に行くだけでも、いざバイクで行くとなると十分な大冒険だった。

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ヘルメット越しに聞こえてくる、エンジンの回転音と全身が風を切る音。

流れていく景色は見慣れたもののはずなのに、どこか知らない町に来たようにも感じる。

嗅覚は脳に直結していて感情や記憶に大きく影響するというが、街路樹や道端の草木の匂い、前方車両から流れてくる排気の匂い、ましてや歩道越しの畑の肥料の匂いですら、確かに気持ちを高ぶらせてくれるものの一つとなっていく。

ついに降り立った初めてのバイクでの公道。あんなに不安いっぱいで躊躇ってすらいたはずなのにどうだろう、いざ走り出してみたら爽快感とワクワクが止まらない!モーターサイクルとはこんなにも楽しい乗り物なのか!このままどこまでも走り続けられるのではないかとすら思うほどの愉悦に浸ってしまう。

そして澄んだ秋空の下、田畑の間に延びるゆるやかな坂道を上がった先に、突如その瞬間は訪れた。

「海だ」

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ハッと息をのんだ。目的地の水平線を認識した瞬間、自分でも理解できないほど、なぜかどうしようもなく心が躍って仕方がなかった。何度も見てきた福田の海なのに、この時は「自分でバイクを操り、無事たどり着くことができた」という嬉しさと達成感も相まってか、いつも以上にキラキラと輝いて見えた。

“Revs your Heart (レヴズ ユア ハート)”
*Rev: エンジンの回転を上げる、わくわくさせる、高ぶらせる

ああそうか、これか。ヤマハ発動機が掲げるブランドスローガン“Revs your Heart”が表すのは、まさにこの気持ちのことだったのか。足元から伝わってくるエンジンの振動に共鳴するかのように、心臓がドッドッドッドと高鳴るのを感じた。

この日、二輪免許取得から1年半越しに叶った初めての経験を通して、ようやく私もヤマハ発動機の社員として、そして1人のバイク乗りとして、「心のエンジンの回転数が上がる」感覚を知る人間になれたのだった。

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私は、モーターサイクルに乗る時に「エンジンがかかる瞬間」は二度あると思っている。

1度目は、バイクというマシンそのものにエンジンがかかる瞬間。
2度目は、そのマシンに乗るライダー自身の心にエンジンがかかる瞬間。

あの日知った感動と喜びをこれからもずっと忘れずに、あの瞬間感じた高揚とワクワクを一人でも多くのお客様に届けられるよう、明日も頑張っていこうと思う。

MN

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ヤマハ発動機では、note社とコラボして、#エンジンがかかった瞬間 の投稿コンテストを実施中です。ぜひ、あなたの「心のエンジン」を教えてください。

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