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船乗りとしてのアンジンさんをイメージする楽しさ 「航海者 三浦按針の生涯」 【キャビンの棚】

 三浦按針みうらあんじん(ウィリアム・アダムス)という名前は、多くの方が日本史の授業で教えてもらった記憶があるのではないでしょうか。その三浦按針は、オランダの貿易船に乗って日本にやってきて、徳川家康に召し抱えられました。相模・三浦の国に250石の領地と三浦按針という名、そして妻を与えられ、外交顧問として活躍し、日本でその生涯を綴じた、ということになっています。
 しかし、タイトルが示すとおり、この物語に描かれた三浦按針はあくまでも「航海者」なのです。 

 1564年、イギリスに生まれたアダムスは12歳にして造船所で働き、成人した後、妻と二人の子を母国に残し、オランダの貿易船団に乗り込みます。西回りの航路で3年以上の航海を経て、1600年にようやく日本に到着しますが、その航海は壮絶にして、凄惨を極めました(最初の目的地はそもそも日本ではなかった)。

 小説のアダムスは、船団の一隻「リーフデ号」の、優れた航海士です。「航海者」としての物の考え方、視点。ここには、日本史の授業で名前を知ったときには想像すらしなかった三浦按針が登場し、活躍します。そこに新鮮な共感を覚えるのです。そして彼は、日本においても航海士であり続けました

 直木賞作家・白石一郎は、日本における海洋歴史小説、海洋冒険小説といわれるジャンルを切り開いた作家の一人です。「航海者 三浦按針の生涯」は、白石一郎文学の集大成と謳われています。他の白石作品と同様、主人公の生涯に、白石一郎の日本海洋史観、海洋国・日本に対する誇りのようなものが込められている気がします。

「航海者 三浦按針の生涯」
著者:白石一郎
発行:文春文庫
価格:639円(税込み)※上下巻

※この記事は過去の「Salty Life」の記事に加筆・修正して掲載しています。


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