熱燗がうまい季節にひと手間かけて 「ふぐ鰭酒」 【船厨- レシピ】
かなり熱めの燗から香ばしい湯気が立ち上ります。火を入れ、軽くアルコールを飛ばして。中にはふぐの鰭。味わい豊かな冬のお酒です。
戦後から「三倍増醸清酒(三増酒)」と呼ばれる日本酒が幅を利かせていたそうです。当時の日本は深刻な米不足。食べるのに必死だったこともあって、特に酒造米には事欠いていたそうです。そこで主流となったのが、もろみに、清酒と同濃度に水で希釈した醸造アルコールを入れるなどして作られた三増酒だったのです。いわゆる二級酒だったのですが、この酒をいかに美味く飲むか―、その手段として「鰭酒」が定着したのだそうです。
ふぐひれ酒に使うのは、トラフグの鰭が主流のようです。最近は相模湾や東京湾でもタイラバなどに良型が喰いついてきます。もちろん、鰭とはいえ、調理免許がなくては裁けません。キャビンや自宅で味わう方法は無いものかと思案していたら、調理済みのトラフグの鰭が鰭酒用として売られていて、割と簡単に手に入りました。それほど高価でもありません。
トラフグの他、キンメダイの鰭をオススメする人もいます。どちらにしても、もちろん美味いのですが、安酒と、いわずとしれた高級魚の組み合わせというのは興味深いところです。
鰭酒に似た酒の飲み方に骨酒というのもあります。使う魚はイワナやアユなど川魚が代表的ですが、海の釣魚ではキスやハゼ、メバルなどもイケると言われています。
魚の鰭や骨まで味わうというのは、いかにも日本人だよなあ。もちろん、いい意味で、です。
※この記事は過去の「Salty Life」の記事に加筆・修正して掲載しています。