「タイ風タイのフィッシュヘッドカレー」で東南アジアへ飛ぶ 【船厨- レシピ】
珍しく、東京湾で見事なマダイを釣り上げました。ホントに珍しく、です。63センチありました。もちろん、ふだんから狙って釣っているのですが、こんなサイズのマダイはなかなか釣れません。腕が悪いのかというと、そうでもないらしく、周りの人は「東京湾のタイラバ(タイを釣るためのルアー)はそんなものだ」と慰めてくれます。
この日、アタリがあったのは、このマダイが釣れたとき、一回だけでした。
食べることを目的とした釣りはしないのですが、アタリの主がマダイだとわかったときは、卑しいもので、「なんとしてでも食べたい。絶対に釣り上げる!」と力が入ります。力なんていらないのですけど、とにかく頑張ります。そして、真っ先に思い浮かべるのが刺身でなく、塩焼きでもなく、まずはフィッシュヘッドカレーなのです。フィッシュヘッドカレーをそれほど特別視しているが故、これをつくって食べるのは、自分で鯛を釣ったときだけと、さほど意味の無い、それでも喜びが増す特別ルールを課しているのです。
フィッシュヘッドカレーはシンガポールの郷土料理です。実際に拙子が初めて出会ったのもシンガポールでのことでした。最初に口にしたのはシンガポールの高級感漂うヨットクラブのレストランです。その美味さは衝撃でした。シンガポールから橋で渡ったところにある、マレーシアの小さな漁村でも食べました。こちらは中華料がベースのレストランでしたが、それもまた、めっぽう美味い。その衝撃的な出会いから相当な年数が経ちましたが、同行者とどちらが美味かったかと、いまでも意見を戦わせることがあります。
いままで何度か自作のフィッシュヘッドカレーを試しました。スパイスを扱う大手の食品会社のホームページにレシピが掲載されていましたが、それが拙子の押す、ヨットクラブの味に近いような気がしています。ただ、日常では使用することのないスパイスを使うため、さっと気軽につくるわけにはいきません。そこでひらめいたのが“タイ風”タイのフィッシュヘッドカレー、というわけです。
作り方はかんたんです。少し大きめのスーパーなどに売っているタイのレッドカレーのペーストと、ココナッツミルクさえあればできちゃいます。
シンガポールのフィッシュヘッドカレーとはもちろん異なりますが、これはこれで素晴らしく美味い。タイのお頭に潜む、柔らかな魚肉をかき出しながら、たまたま台所に残っていたタイ米で炊いたご飯にかけながらいただきました。甘いココナッツミルクとカレーの辛さ、贅沢なマダイのハーモニーは、頭を東南アジアへとトリップさせます。
マダイを釣った時の最高のご褒美です。大きかったので頭を縦半分に切り、二度つくって味わいました。
もちろん読者のみなさんにはくだらぬルールは不要です。もしも食べたくなったら、迷わず魚屋さんでどうぞ。