頭の隅っこで「アンカーローラー」 【海の道具】
マリーナなどで見かけるボートの船首にローラーが取り付けられているのにお気づきでしょうか。賢明なる読者諸氏のご推察通り、あのローラーはアンカー(錨)を降ろす際に、ロープやチェーンなどで船べりを傷めないように、そしてスムーズにアンカーが降りていくようにするためのものです。
漁船などになると、前方に大きく突き出していたりして、俗名“角ローラー”などと呼んでいたりします。もう一つ、横向きのローラーの両サイドに縦向きのローラーが付いているものもあります。これは、アンカーを降ろした時、ロープが左右に振れてもロープがスムーズに動くように工夫されたもので、三方ローラーという名がつけられています。
たかだかロープの出し入れにそんなに気を使うのかと思われるかもしれませんが、これが意外にも重要なのです。アンカーがしっかり海中に固定されている場合、波や風、潮流によってボートが流されようとする力がロープに掛かるわけですが、ロープは船体のクリートなどに繋がれており、海底方向に引っ張られるので、船体に触れる部分にも相当な力が掛かることになります。特に波の上下による加重は瞬間的なのでいっそう強大になります。
それらを一点で受ける船体側のダメージも大きいのですが、ロープの損傷も大きく、あっさり断裂、なんてことにもなりかねません。
なので、ローラーも適度な柔らかさがあるゴム製だったり、硬質な樹脂を用いたもの、さらには常に滑らかな状態を保つステンレス製だったりと、ロープとの相性を考えながら選択することになります。さらに言えば、形状もただの円筒形もあれば鼓のように中央が凹んでいるものもあります。
でもまあ、実際アンカーローラーはボートメーカーがつけたものをそのまま使えば問題がないので、オーナー選択に悩むことはそうはないのだけれど、そういう気づかいをしながら選ばれた物たちなのだ、ということは、ちょっと知っておいてもらえたら嬉しいかな。