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至高のボサノヴァで海気分 「ゲッツ/ジルベルト」 【キャビンの棚】

 ボサノヴァは、世界三大美港のひとつブラジルのリオ・デ・ジャネイロで生まれた音楽です。波や潮、そして海がテーマの曲が多いのは、世界遺産リオの豊かな自然があるからと言われています。カフェやレストランの定番BGMですが、海を感じさせる曲は自室で聴いても心が癒されます。さて、今回はボサノヴァの魅力を世界に知らしめた歴史的な名盤「ゲッツ/ジルベルト」を紹介します。

ボサノヴァはジャズではなく、サンバの一種です

 ボサノヴァは、ブラジル伝統のサンバのリズムとジャズやクラシックのハーモニー感覚をミックスした音楽です。特徴としては、けっして大きな声で叫ぶのではなく、小声でささやくような歌い方やギターを鳴らしつつリズムも刻む、バチーダ奏法が有名です。この原型はギタリストのホアン・ジルベルトとピアニストのアントニオ・カルロス・ジョビンといった後のブラジルを代表する音楽家が作ったとされています。1950年代の若者が求めた、心地よく洗練されたサウンドのボサノヴァは、新しいサンバとして1つのジャンルを確立しました。
 1950年代はリオが首都である最後の時代で、経済成長も進み、市民の生活様式が大きく変わった時期でした。それまで男性の付き添いが必要だった10代の若い女性もビーチや街の通りを自由に行き来できるようになり、海が若者にいっそう身近になりました。ボサノヴァは当時の若者ミュージシャンが演奏していたことで、彼らの関心のあった潮や波、海がテーマの音楽が多くなっていったのです。

誰もが一度は耳にしたことのある「イパネマの娘」

 1959年にはブラジル・フランス合作映画「黒いオルフェ」にボサノヴァが多数使用され、ブラジル国外でも評判になりました。そして1963年、ボサノヴァの代表的な人物ホアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビンがアメリカのアルトサックスプレーヤー、スタン・ゲッツと共作したのが、本作「ゲッツ/ジルベルト」です。このアルバムによってボサノヴァはアメリカだけでなく世界でも広く知られることとなりました。
 人気となった大きな理由は「イパネマの娘」でしょう。リオのイパネマ海岸のバーで働くきれいな女性をモデルにした曲です。本作でボーカルのホアン・ジルベルトの妻・アストラッドはスタジオ未経験で急遽レコーディングしたという伝説的な逸話を残しました。実のところアストラッドのボーカルは素朴さを残すと揶揄されることもあります。ただここではそれが逆にフィットし、シングル盤は全米で200万枚以上を売るベストセラーとなりました。
 今も日本をはじめ世界には多くのボサノヴァファンがいますが、現地では人気は低迷し、ちょっと昔までボサノヴァはブラジルで忘れ去られた存在となってしまいました。本作を聞いた国外のファンからリオ・デ・ジャネイロへの関心が集まったことで、ブラジルでのボサノヴァも再び脚光を浴びています。
 ボサノヴァの最も有名なアルバムと曲を聴けるポピュラー音楽史的名盤です。BGMにするとお洒落な雰囲気を演出するほか、波のような、ゆったりとしたリズムでリラックスな効果もねらえます。まるでリオのビーチにいる気分にもなれる1枚です。

「GETZ/ GILBERTO」
Stan Getz Joao Jirberto
レーベル:ユニバーサル クラシック&ジャズ
参考価格:¥1,500(税別)

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