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冬の津軽海峡、それともニューカレドニアのビーチ? 「SEAGULL(かもめ)」 【キャビンの棚】

 どこの波止場でしょうか、海辺で手を伸ばして空飛ぶカモメに餌を差し出す女性、そして小さな女の子。その味のある写真を自分のアルバムのジャケットにしたのは、ノルウェー出身の女性のジャズ・ヴォーカリスト、カーリン・クローグです。
 ノルウェーとジャズというとなかなか結びつかないかもしれませんが、カーリン・クローグは、この北欧で確固とした実力の上に、先鋭的な技法を取り入れながら活躍を続けてきたアーティストです。
 1968年にリリースした「JOY」では、この【キャビンの棚】でもご紹介したハービーハンコックの「処女航海」を、斬新的な手法で歌い上げ、注目されました。

 「SEAGULL(かもめ)」は、長年のパートナーであるサックス奏者、ジョン・サーマンを指揮に、ノルウェーのベルゲンを拠点に活動するビッグバンド「ベルゲン・ビッグバンド」を従えた意欲作で、スタンダードに加え、カーリン・クローグの代表的なオリジナル曲を交えたダイナミックで聴きやすいアルバムです。実験的な手法といっても、落ち着いた、しっとりした歌声は、実力ある女性ヴォーカリストならでは。

 表題作の「かもめ」は神秘的・幻想的な演奏から始まり、2分ほどしてからカーリンが歌い始めます。“かもめ”という鳥に対するイメージは人それぞれでしょうが、聴いていると「ああ、かもめだなあ」と納得してしまうのです。編集子は冬の津軽海峡を飛ぶ海鳥を思い出してしまいました。が、ニューカレドニアのビーチで波打ち際を低く飛ぶ海鳥もイメージできたりします。音楽は面白い。
 「SEAGULL」のリリースは2005年。このとき彼女は68歳でしたが、2016年までアルバムを制作し続けています。 あっぱれ、です。

「SEAGULL(かもめ)」
KARIN KROG(カーリン・クローグ)
レーベル:MUZAK INC.
参考価格/2,059円(税込)

※この記事は過去の「Salty Life」の記事に加筆・修正して掲載しています。

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