かながわ憲章「ともに生きる社会」の実現に向けたコラボレーションへの想い
こんにちは、ヤマハ発動機のWと言います。
神奈川県の「ともに生きる社会かながわ憲章」×ヘラルボニーさん×ヤマハ発動機コラボの車いすカバーのニュースリリースを見て感じた、自分の思いを文章にしてみました。
というわけで、「海」以外のお話ですが、お付き合いいただけると嬉しいです。
若かりし頃、縁あって、月に1回、知的障がいのお子さんが通う施設にボランティアに行っていました。ボランティアに行ってた、というとエラそうですが、なんてことはなく、ただ、対象の施設に伺い、子供達と思いっきり遊ぶだけのボランティアです。子供好きな私にとっては、ボランティアという感覚もあまりありませんでした。
そこには色々なタイプの障がいを持つお子さん達がいました。ずっと同じ事を繰り返すお子さん、ずっと黙っているお子さん、など。あなたが一番楽しそうだったよ、と言われながらも、施設のおもちゃを使って、毎回、お子さん達と一緒に思いっきり遊んでいました。
どのお子さんもすごくきれいな澄んだ目をしていたのが印象的でした。
このボランティアに行ってから、私の中で「障がい」についての認識が変わりました。
「障がい」って特別な事ではないのだと。性別、肌の色、目が大きい小さい、太っている痩せている、といった外見的なことから、人前で話すのが得意苦手、物事にまったくこだわらない、いつまでも1つのことにこだわる、といった内面的なことなどなど、人は外見も内面も、それぞれ特徴があり、一人として同じ人間はいないのです。異なる特徴の人間が世の中にいるのは、当たり前のことなんですよね。
そして今、私の働くグループでは、障がいを持つ方が一緒に働いています。
彼は他人とお話することが苦手です。朝、出社した際に「おはようございます。」と声をかけても返事が返ってくることはありません。必ず決まった時間にひとり静かに席に着き、集中して業務に取り組み、定時になれば時間ぴったりに完璧に業務を終えて、静かに帰っていきます。
話すのが苦手、ということもあり、最初はどうコミュニケーションを取ればいいのか、少し悩みました。
どういう風にすれば彼が作業しやすいか考え、交換日記ならぬ、交換ノートを準備することにしました。何か困ったことがあったときや、毎日の業務終了の報告など、ノートに書いてもらうようにしました。また、グループ内のメンバーにも彼の特性を伝え、見守ってもらえるようにお願いしました。
彼は毎日、交換ノートに丁寧な字で細かく報告をしてくれますが、ノートの中に彼の感情に関する表現はありません。彼が本当はどう感じているのか、本当に業務に集中しやすい環境を作れているのか、何か不満に思うところはないかということが、少し気にかかっていました。
そんなある日、彼を派遣してくれているヤマハモーターMIRAI(株)さんから、現在の業務についてフィードバックを頂く面談がありました。そこで教えてもらったのは、なんと、彼はこの職場の居心地が良いようで、やりがいを持って仕事をしてくれているということでした。
彼が私たちのグループに来て、もうすぐ1年になります。彼は誰よりも真面目に一生懸命仕事をしてくれています。いい加減な私が対応すると間違いばかりの作業も、彼が対応すると間違いはゼロ。彼のおかげで作業ペースが格段に上がっています。
感情を表に出さない彼ですが、挨拶するとわずかに頭を下げてくれますし、食後のおやつに、と、お菓子を渡すと静かに頷いてくれます。
彼のことは、まだまだしっかりと理解できていない部分もきっとあるかと思います。しかし、今後も特性を尊重しつつ、お互いにいい関係を保てるようにしていきたいと思っています。
今回発売した車いすの車輪に装着するスポークカバーは、ヘラルボニーさんとコラボしたお洒落なデザインに加え、神奈川県の「ともに生きる社会 神奈川憲章」に賛同したものです。
今回、偏見や差別のない共生社会の実現を目指す憲章を、車いす用スポークカバーと共に広めることにより、当社の目指す社会に近づくと考え、憲章の理念を広めるためのプロジェクト「#リスペクトでつながろうコラボ」としてコラボレーションが実現しました。
▽コラボモデルの車いすスポークカバー(車輪部分のカバー)
▽ともに生きる社会かながわ憲章マークが入っています。
平成28年7月26日、県立の障害者支援施設である「津久井やまゆり園」において19人が死亡し、27人が負傷するという、大変痛ましい事件が発生しました。
この事件は、障がい者に対する偏見や差別的思考から引き起こされたと伝えられ、障がい者やそのご家族のみならず、多くの方々に、言いようもない衝撃と不安を与えました。
私たちは、これまでも「ともに生きる社会かながわ」の実現をめざしてきました。
そうした中でこのような事件が発生したことは、大きな悲しみであり、強い怒りを感じています。
このような事件が二度と繰り返されないよう、私たちはこの悲しみを力に、断固とした決意をもって、ともに生きる社会の実現をめざし、ここに「ともに生きる社会かながわ憲章」を定めます。
一 私たちは、あたたかい心をもって、すべての人のいのちを大切にします
一 私たちは、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します
一 私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します
一 私たちは、この憲章の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組みます
平成28年10月14日
神奈川県
引用元:「ともに生きる社会かながわ憲章」ポータルサイトhttps://www.pref.kanagawa.jp/docs/m8u/cnt/f535463/index.html
障がい者施設を狙ったあの痛ましい事件があった当時は、衝撃を受けるとともに大変胸が痛みました。
当事者の皆様には本当に心よりお祈り申し上げます。
偏見・差別によって人を傷つけていいはずはありません。
誰しもが幸せに生きる権利があると思います。
こんな事件は、今後二度とあってはならないと、強く思います。
その想い・憤りを忘れず、共生社会を築くべくこういった憲章を作り、活動されている神奈川県の職員の皆様は、本当に素晴らしいと思います。
ヤマハ発動機として、この憲章に賛同していることと、ヘラルボニーさんとコラボして車いすの皆様の毎日を彩るお手伝いができることを思うと、あらためて、自分の会社を誇りに思い、この会社で働くことができる事を誇りに思います。
そして、一緒に働いてくれる同僚を誇りに思います。
ひとりひとりが考えて発信することは、ともに生きるための小さな一歩につながると、私は考えています。
皆さんも是非、「ともに生きること」について考え、発信して頂ければ幸いです。
▼ コラボしたスポークカバーは、東京のヘラルボニーさんの展示会で実物を見ることが出来ます。是非お越しください。
▼ ヘラルボニーさんコラボについてはこちら