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「なぜ?」だらけのフネの世界は面白い! 【キャビンの棚】

 みなさんは出航前のボートの点検、きちんとできていますか。ボート免許教室(教習所)では、いったん海に出たら救援を呼ぶのも容易ではないから、船長自身がしっかりと最低限の点検をすることを求めています。

 まず、外板などの点検です。デッキやハルに損傷はないかなど。次にエンジンや電気系統、燃料系統。そして、係船・消火設備や船検証など搭載品のチェックです。

 これらは、①あなたの船は、沈まずに浮いていられるか ②ちゃんと走れるか ③トラブルや当局の臨検に遭遇しても安心か(笑)ーととらえると分かりやすいでしょう。笑っちゃいけないか(笑)

 この考え方は、プレジャーボートに限らず、漁船や大型の商船などでも基本的にはいっしょだと思います。大きくても小さくてもフネはフネです。ですから、本書は主に「本船」(ここでは大型船の意味)を考察の対象としていますが、プレジャーボート乗りにとっても大いに役立つはずです。

 とりわけ、第2章「船を浮かべる力ー浮力」「船の強さー船体構造と船体強度」「船を起き上がらせる力ー復元力」「船が進むのをじゃまする力ー抵抗」や、第4章「船を揺らす力ー船体運動」などは、講談社ブルーバックス・シリーズの一書らしく、さまざまなダイナミクス(力学)の観点から、とても興味深い学びが得られます。

 評者なりに注目したひとつは「揚力」です。ヨットのセイラーならなじみの言葉でしょうが、パワーボートの人はあまり気にしないかもしれません。しかし、ボートにかかる揚力は、風を受けてセイルが生み出す推進力としての揚力だけではありません。そもそも、スクリュープロペラによる推進力自体が揚力のたまものです。 
 また、舵を切ったとき、ラダー(舵板)の両側に水圧差が生じて揚力が発生し、そのおかげでボートは曲がっていくんです。あるいは、増速したボートが滑走状態になるのも船首船艇に働く揚力によるものなんです。

 著者は流体力学での「渦」が専門なので、抵抗の話などもふんだんに語られています。みなさんもぜひ、フネを取り巻くダイナミズムに触れてみてはいかが。

「最新図解 船の科学」
著者:池田 良穂
発行:講談社
価格:1210円(税込)


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