“海が好き”を自負しながら、どれだけ海を知っているのか。 【キャビンの棚】
私たちボート乗りのお楽しみのゲレンデ、海。とくに沖縄辺りにくり出して、白い砂浜から続く青い海と青い空の境目が溶け込んだグラデーションを見たりしたら、この美しい海はずっと守っていかなきゃなんないなと、水の惑星に住む者として思いを新たにします。
とはいうものの、自分はどれだけ海のことを知っているのだろうか、という忸怩たる思いも持ってきました。そんな折、東京・上野の国立科学博物館で特別展「海」が開催されていることに気が付いて、行ってきました。今回のテーマは「生命のみなもと」としての海を紹介してもらえます。そこで仕入れた海の起源をかみくだいて少々…。
46億年前に誕生した地球は灼熱のマグマで覆われ、まだ海はありませんでした。そこへ小惑星や、より小さな微惑星、あるいは隕石が大量に降り注ぎます。これらに水が含まれていたんです。3年前に地球に帰還したハヤブサが持ち帰った小惑星リュウグウの試料からも確かめられました。
地球と衝突した隕石は爆発して水蒸気を含んだ大気をつくりました。地表のマグマが冷えてくると、水蒸気は雨となり、それが溜まって海ができたのです。雨と言っても年間雨量1万ミリ(10メートル!)の豪雨です。しかも、それが1000年!続きました。こうして少なくとも40億年前までには原始の海が誕生していたとされます。
当初の海には生命は存在しませんでした。しばらくして火山活動が始まったことで、海底から熱水が放出され、水素を代謝に利用する微生物がまず誕生したのではないか——という「海底熱水説」が最新の有力な仮説だそうです。
これが第1章「海と生命のはじまり」です。生きる化石と言われるシーラカンスの液浸標本を横目に次のコーナーへ向かうと、第2章「海と生き物のつながり」。さらに第3章「海からのめぐみ」は人類の日本進出や旧石器時代から縄文時代の暮らしにも海が大いにかかわっていたことが紹介され、第4章「海との共存、そして未来へ」とつながります。
残念ながら科博での展示は10月初旬に会期末を迎えましたが、来年春に名古屋市科学館で巡回展が予定されていますので、興味がある人はぜひ。
ところで、私が科博に行くたびに楽しみにしているのが、日本館にある「シアター36〇」なんです。球形のシアターの内側すべてがスクリーンになっていて、右も左も上も下も全方位に映像が展開される臨場感は、自分は動いてもいないのに乗り物酔いを起こしそうなほどです。もちろん今回も特別展の後、行きました。プログラムは月替わりで、このときは「海の食物連鎖-太陽からクロマグロをつなぐエネルギーの流れ-」でした。空も飛べる潜水艇に乗ったテイで海にダイブ。まず植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、それをイワシが食べ……という様子を間近で観察します。そして「ついに登場しました、食物連鎖の王ッ」てなナレーションとともにクロマグロが登場し、「食って食われて、このようにバランスが保たれているのです」で、エピローグの場面に切り替わります。すると、なんとそれは寿司屋のカウンターじゃありませんか(笑)。そういうことなんですね。