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日本中で大人気の海藻、石垣島のモズク養殖。 【ニッポンの魚獲り】

 沖縄県八重山列島の石垣島。その中心地ともいえる石垣漁港(新川漁港)から出港し、〈第三百波丸もなまる〉は西方16kmほど、小浜島の沖合に設置されたモズクの養殖場へと船を走らせます。

 この日はモズクの収穫が行われました。石垣島では、モズクの収穫も大詰めを迎え、4月には全作業が終了します。

 今や日本のどこに行ってもモズクは手に入ります。スーパーなどでもパックに入ったモズク酢は定番の人気商品です。また、近頃は酢の物ではない生のモズクも通販で手に入るようになりました。消費者である我々にとってはモズク料理のレパートリーも増え、嬉しい限りです。
 ただし、モズク養殖の作業現場を実際に目にすると、モズクがいかに大きな手間を掛けて育てられ、収穫されたかを知ることになります。あの小さなパックに入ったモズクがとても貴重なものだと感じるのです。

ノリ養殖作業船DW-480-0Aの特長を活かし、モズク養殖の作業船として活躍する〈第三百波丸〉

 養殖場に到着すると船をアンカーで固定し、作業が始まります。モズクの摘採作業に当たるのは4名。船主の王滝貴おうたき たかしさんも摘採のチームに加わります。これは船上から空気を送り込みながらの海底での作業。鉄製の筏に生育したモズクをポンプで吸い上げ、船上へと送っていきます。
 これはかなりの重労働です。いちど潜ると、2〜3時間も陸に上がらず海中での作業が続くそうです。
「この仕事を始める前はちょっと太り気味だったんですが、あっという間に体重が落ちました。ダイエットにいいですよ」と、精悍な乗組員が笑いながら教えてくれました。

次々と海底から吸い上げられていくモズク。
仕分けだけでなく、ポンプエンジンへの給油など、作業は絶え間なく行われる

 一方、船上で作業に当たるのは2名。こちらものんびりというわけには行きません。海水とともに吸い上げられたモズクをトロ箱に移し、前部のデッキに積み上げていきます。商品価値を維持するためにも欠かせない作業です。また、仕分けだけでなく、ポンプエンジンへの給油など、作業は絶え間なく行われます。

 2023年の4月に進水した〈第三百波丸〉は、有明海のノリ養殖作業船として評価の高いヤマハ発動機製「DW-480-0A」という船をベースに、船側板を取り付けて乾舷かんげんを嵩上げするなど、船主の王滝さんのアイデアを取り込みながらモズク養殖作業船として完成させました。

摘採したモズクを積載して港へと快走する〈第三百波丸〉

「これまで使用していたドライブ船に比べ、積載量が格段と増えたこと、また船足も速くなり、作業効率が大幅によくなりました。新造は大正解でした。満足しています」

 摘採したモズクは帰港するとすぐさま水揚げして出荷となります。運搬中のモズクはオーニングを利用して直射日光を避けてシートをかけるなどして大切に扱われます。時間がたつと緑色に変色し、売りものにならないのです。その点においても船のスピード性能は不可欠です。

第三百波丸のみなさん。中央が王滝貴さん

 王滝さんは、もう一隻、外洋型の漁船を所有し、モズクシーズンが終わった後は、パヤオ(浮魚礁)でのマグロ漁などに精を出すそうです。

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