網をくぐり抜けて摘み取りをして行く明石のノリ養殖 【ニッポンの魚獲り】
日本に住む人々にとって、ノリ(海苔)は最も身近な海産物のひとつ。おにぎりや寿司はもちろん、煎餅や餅に巻いたり、佃煮にしたりと、使い方、食べ方は様々です。また、初春の季語としても用いられるなど、文化的にも密接に関わっています。
さてそのノリですが、養殖で採取されることがほとんど。江戸時代の初期に東京湾で養殖が始められてから、現在では太平洋側の多くのエリアで行われています。
そして生産量をみると、福岡、佐賀、熊本、長崎の4県に面した有明海の海苔が有名ですが、県別で見ると兵庫県は佐賀県と1、2位を争うほどの海苔の産地なのです。
兵庫県明石市の林崎は「明石海苔」の産地として有名です。目の前に臨む明石海峡は潮が速く、魚種も豊富で、アナゴやタコ、マダイといった漁船漁業の好漁場として知られますが、豊富な栄養分を受け止めるその海域は、ノリの育成にも好影響を与えています。
明石の海苔養殖は夏から始まります。ノリの胞子を作る糸状体(果胞子が成長した状態)の培養をし、採苗、育苗、ノリ網の本張り、そして年の瀬から収穫がはじまります。
収穫作業を一経営体による複数の大型漁船- システム船で行っているのも林崎のノリ養殖の特徴といえます。写真の〈小松丸〉(DX-58-0A)はノリの収穫直後に網の酸処理を行っているところです。
ノリ網を船ごとくぐり抜け、ブリッジ上部(天井)に設置した装置で網を消毒していくのです。収穫も同様の方法で、天井でノリを刈り取っていきます。
降水量の減少などの要因により、減産が続いた佐賀県にかわって、兵庫県のここ2年の生産量は日本一となっています。それでもノリ全体が減産の傾向にある昨今。林崎では一時的な下水処理規制緩和など様々な取り組みでノリ養殖場の醸成に努めています。