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船底塗料—。軽やかに海を走るためには船底のお手入れが欠かせません 【海の道具】 

 船底塗料と聞いただけで、うんざりしてしまうボートオーナーさんもいるかもしれません。係留保管しているオーナーさん、つまりボートを海に浮かべた状態で保管している方たちです。船底の汚れを落とし、前に塗った塗料を剥がし、新しい塗料を塗り直す。そんな繰り返しを年に1回ほど行わなくてはならないからです。

 なぜそんなコンスタントに塗装をし直さなければならないかというと、船底塗料には、貝や藻類などが付着しないようにする成分が含まれていて、その有効期間が大体1年となっているせいです。もちろん、係留場所や稼働状況、その年の海水温や潮流によっても異なるので一概には言えません。

 今回はレジャーボートのように、漁船などに比べて稼動が少ないボート、つまり係留している時間が長いボート用の船底塗料についてお話しします。

 1ヶ月、または2ヶ月に1回くらいしか稼働しないようなボートは、じっと動かない時間が長いので、フジツボなどが付きやすい。なので、動かなくても付着を防ぐ成分が溶けだすような工夫が施されています。もしこの塗料を始終出港する漁船などに塗ってしまうと、すぐに成分が流れ出てしまって役に立たなくなってしまいます。

 「小さい貝が付くくらい別にいいじゃないか」と大らかな考えの方もいらっしゃいますが、これがなかなか、見逃すわけにはいかぬ影響が出ます。船底に抵抗が生じるからです。スピードにして2〜3割は落ちるし、燃費は逆に2〜3割増してしまうのです。それだけの違いが出るとなると、捨ておくわけにもいきません。

 話は明治時代に遡りますが、日露戦争の時、ヨーロッパを出港して喜望峰を回り、はるばる日本海に達したバルチック艦隊が破れたのは、船底にびっしり貝やら藻類やらをまとわりつけていたために、思うように走り回れなかったためと言われています。

 沈没まではしないにせよ、爽快な気分で海を走り回るには、お手入れは欠かせない、ということです。


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